崑崙の章
第22話 「みんなぁ、ただいまっ!」
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なるんじゃ……」
憲和くんの問いかけは、人としては正しいのかもしれません。
でも、為政者側としては、まだまだ考えが至らないようです。
朱里ちゃんは、くすっと笑って立ち上がりました。
「えっとですね……このじゃがいもが、とてもたくさん取れることは知っていますよね?」
「はい。だからこそ、皆お腹いっぱい食べられますね」
「でも、それをただ広めてしまえばどうなりますか?」
「え? ええと……?」
憲和くんは、なにがまずいんでしょう、という顔をする。
私も立ち上がって、彼へ助け舟を出すことにしました。
「えっと……確かに一時的には食料が溢れて、みんな喜ぶかもしれません。でも……次は食料の暴落が始まります。有り余る食料の価値が下がるということは、官民共に収入の減少を意味するんです」
「それに、次はそれを生み出す土地の争いになります。他の懸念としては、増産した食料がそのまま権力者に集まるだけで、生産する農家にはいつまでも手元に残らないという可能性もあります」
「あっ……」
私と朱里ちゃんの言葉に、思い至る憲和くん。
ただ単に与えるだけではダメなのです。
管理してちゃんと付加価値をつけて広めないと……
「じゃがいもは冷害にも強い植物ですが、盾二様は連作障害と疫病に注意するように書かれています。連作障害は輪栽式農業の導入である程度は回避できるとのことですが、完全ではありません。決められた種類の栽培をすればよいとはいえ、それぞれの専門知識がなければ効率的な収穫は望めません」
「広まったあとにじゃがいもの疫病が始まれば、それに頼りきっていた分、多くの餓死者が出ることになります。一種類の作物に食料全てを頼るのは絶対にしてはならない……そうも書かれています」
「………………」
憲和くんは、がっくりと肩を落とします。
そう……じゃがいもは素晴らしい植物です。
でも……万能ではないんです。
「芽にある毒のこと、連作障害のこと、疫病のこと……それらをきちんと伝達せぬまま、食料としての価値だけあげては意味が無いのですよ?」
「そうですね……すいません、考えが足りませんでした」
朱里ちゃんの言葉に、しゅんとして頭を下げる憲和くん。
その姿に、ちょっと言い過ぎたかな、と思う。
「えっと……皆が食べられる様になることは大事なんです。でも、その管理をできない所に広めるのも問題があるわけで、あの、その……」
「違うよ、雛里ちゃん。ここはちゃんと言わなきゃダメ」
「え?」
朱里ちゃん……?
「憲和くん……ううん。簡憲和さん」
「!? は、はい!」
親しい字呼びだけでなく、姓も含めての正式な呼びかけに、憲和くんは姿勢を正しました。
「善
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