大会〜準決勝 前編〜
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現在のように烈火と呼ばれる姿は想像できなかった。まだ整えれば見栄えもするかもしれないが、そもそもアッテンボローには男色の趣味はないためどうでも良いことだ。
ただ先輩である自分に対しても、堂々と意見を言う後輩だと思った。
そんなイメージの相手に対し――おまけに後輩に対して勝てないということを認めるのは嫌なことだ。しかし、それを認めずに負けると言うのはもっと嫌だ。
そんな合理的な考えこそが、彼の強みであって、剛柔がとれたと評される点であるかもしれない。
物事に対してこだわらない。
よく言えば、欲がなく――悪くいえば、向上心に欠ける。
艦隊は静かにクラウディス星域の半ばまで来ている。
すでに反対側にいる敵といつ遭遇してもおかしくないだろう場所だ。
昔を考えるには、あまりにも危険な場所だろう。
あの生意気な後輩が相手であれば特に――と、コンソールを叩く指が、ふと止まった。
「もしかしたら、マクワイルド候補生は気づいているかもしれないな」
中断した回想の中で、マクワイルドは何と言ったか。
そう――先輩のように上手く撤退したいと――そう言った。
だからこそ、生意気だとアッテンボローは思った。
その時は単純に罰則を戦場に例えたアッテンボローに対して、上手く切り抜けたいと言ったものだと思っていた。
だが、それが実は彼が退却戦を得意としていることを、知っていての発言だとしたら。
退却戦で相手の戦力を殺ぐことは、ヤンからも褒められるほどだ。
その時は褒め言葉ではないと言ったが、自信が得意であるという思いはある。
だからこそ、ワイドボーンとマクワイルドが相手であっても、逃げ切れる自信がアッテンボローにはあった。
だが、それを奴が知っていたとすれば。
そう考えて、アッテンボローの口元にわずかに笑みが浮かんだ。
「それがどうした……だ」
例え知っていたとしても、もうこの場では作戦の変更はできない。
今から戻ったところで、混乱をもたらすだけであるし、何よりこの作戦のために他の艦隊から高速艦を引き抜いて、アッテンボローの艦隊には高速艦が多く配備されている。
その状況で、通常の戦闘を行うのは不利になる。
ましてや、相手はワイドボーンとマクワイルドだ。
結論として、アッテンボローはこのまま作戦を継続するしかなくなる。
それに。
例え、知っていたとしても実際に経験しなければわからないこともある。
マクワイルドが引き込まれないようにしたとしても、他が引き込まれれば結局のところマクワイルドも引き込まれる事になる。
警告音とともに、コンソールに敵艦隊が映った。
索敵艦が発見したらしい。
即座に艦隊情報を送り、索敵艦は相手の戦闘艇によって破壊された。
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