大会〜準決勝 前編〜
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は一人もいないと。
もっとも自分が同盟の真の英雄の考え方を想像するのは、あまりにもおこがましいことかもしれなかったが。
+ + +
「まだ艦影は映りませんね。もう少し離れます」
『くれぐれも気をつけろよ、アッテンボロー候補生』
「大丈夫ですよ。上手く釣ってそっちに連れていきますから、準備しておいてください、ラップ先輩」
『そう簡単にいかないかもしれない』
「私は上手くいくと思いますけどね。相手に見つかって、おびき寄せ――あとは、いただきです」
平地の半分も視界のない状況で、アッテンボローの考えた作戦は古典的な策だった。俗に釣り野伏せと呼ばれる方法で、索敵に見せかけたアッテンボローが敵と接触するや後退して、左右に広がっていた別働隊で包囲するというものだ。
レーダーによる索敵が出来ない現状では、無駄に部隊を分割して索敵するよりも待ち伏せをした方が効果的だろうと考えたからだ。
しかし、この作戦に、当初ラップは難色を示した。
通常であればともかく、ワイドボーンとマクワイルドが相手では、下手をすると最初の一撃でアッテンボロー艦隊が噛み砕かれる可能性があったからだ。敗走のふりをするのと、敗走では大きく違う。
しかし、アッテンボローはそれならそれで良いと思った。
仮に勢いを抑えきれずに、アッテンボロー艦隊が敗走したとしても奇襲地点までは誘導する自信がアッテンボローにはあった。
そうなれば三方向からは無理であっても、二方向からの奇襲はかけられる。
何よりも。
予選を全て圧勝で勝ち進んだ試合を見る事になったチームのメンバーが共通して思うのは、正面からは決して戦いたくはない相手ということだった。
アッテンボローも認めたくはないが、認めるしかないだろう。
ヤン先輩に負けるまでは無敗であり、天才と呼ばれるマルコム・ワイドボーン。
そのワイドボーンを破り、いまだ戦術シミュレーターで無敗を誇るアレス・マクワイルド。
その二人の実力を。
『ガガ…アッテンボロー候補。そろそろ……通信も使えなくなる。ガガガッ……最後に言っておくが…ガ……ぐれも注意しろ。無理だと思ったら……ガガッ…ったん退却するん……だ。いいね?』
「わかってます。そのために高速艦がこちらに配備してくれたんでしょう。逃げるのは任せておいてください」
『自信をもっていう……ガ…れ……』
通信が途切れて、静けさが筺体の中に広がった。
索敵艦が周囲を映し出す明りの中で、アッテンボローは静かに息を吐いた。
最初は生意気な後輩だと思っていたがね。
艦隊をさらに進めながら、アッテンボローは最初の出会いを思い出す。
教官室から嫌そうに出てきた小生意気な後輩の姿だ。
くすんだ金色の髪と目つきの悪い顔立ちからは、
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