大会〜準決勝 前編〜
[2/8]
[8]前話 [1]次 [9]前 最後 最初 [2]次話
「何です。ワイドボーン先輩、こちらは先輩と違って艦隊編成で忙しいんですけどね」
『だから、プライベート通信にしたのだろう。他の邪魔はしていない』
「俺の邪魔もしないで欲しいですが。で、何ですかこの編成は」
『ふふ、喜べ。我が艦隊の宇宙母艦を全て君の隊に送っておいた』
「それなら二つばかり返しますから、代わりに索敵艦を二ダースと変えてください」
『それは無理だな。なぜなら、索敵艦も通常通りしか取得していない。君に回せば、他が困るということだ』
「俺が困ると言う事は考えなかったのですか」
『ふん。馬鹿にするな、アレス候補生』
「何です。ワイドボーン先輩」
『貴様のシミュレーターを今までずっと見てきた。あの負けた戦いからずっとだ』
断言した言葉は強い。
冷静に聞けばストーカーであるが、アレスはただ小さく苦笑した。
「一カ月以上前の話ですね。ご苦労なことです」
『ああ。これほど他人のシミュレーターを見たのは初めてだ。あのリン・パオの動き以上に見たぞ。喜ぶと良い』
「アッシュビー提督は見なかったのですか」
『あれは何というか、見ていても出来試合のようでな。艦隊運用や戦術の参考にはならん……ま、それはともかくだ』
話を切るワイドボーンに、アレスは唇を小さくあげる。
ブルース・アッシュビーの話は、いまだ知るケーフェンヒラー大佐は塀の中だ。
ただの戦歴で、全てを理解しているわけではない。
だが感じるものがあるのは、やはり天才なのだろう。
『貴様は艦隊動作や戦術眼なども優れているが、何より人の欠点を見抜くのが上手い』
「褒めてんですか」
『褒め言葉だ。艦隊を隊とするには、連結点が必要だ。むろん、それが一つの艦というわけではないが、楔となる点はある。貴様はそこを実に嫌らしく攻撃する』
「まったく褒められている気がしないですけどね」
『貴様にとっては、三次元チェスと戦闘は同じなのだろう。相手が出来ることを理解し、出来ないところを実にうまく攻める。だから、貴様は三次元チェスも上手いのだ。ヤン・ウェンリーなどは三次元チェスが好きな癖に、随分下手だぞ』
「やったことがあるのですか」
『その事に気づいて、あいつを誘ってみたが、瞬殺だった。もちろん、私が勝った――こう見えても、私も強いのだぞ?』
「それなら俺と一回やりますか?」
『やめておこう。負ける戦いはしない主義でね。だから私は無敗なのだ』
にっと笑ったような気配が、漏れた。
『それはともかく、ヤンは確かに強い。だが、あいつの場合は戦術というよりも、戦略家としての戦い方だ。剣と弓の原始人の戦いに、いきなり重火器を持ちこむようなものだ。強いが、剣同士の戦いとなると戦略の効果が出てくる機会は限られる。さらにもっと厳密にルールが定められた三次
[8]前話 [1]次 [9]前 最後 最初 [2]次話
※小説と話の評価する場合はログインしてください。
[5]違反報告を行う
[6]しおりを挿む
[7]小説案内ページ
[0]目次に戻る
TOPに戻る
暁 〜小説投稿サイト〜
利用規約/プライバシーポリシー
利用マニュアル/ヘルプ/ガイドライン
お問い合わせ
2024 肥前のポチ