大会〜準決勝 前編〜
[1/8]
[8]前話 [1]次 最後 [2]次話
モニターに広がったのは、遭遇戦という文字だ。
想定としては、どこかの星域で偶然に互いが遭遇したというものだ。
敵対することが決定していて偶然も何もないと思うが、想定の中でも戦略性は乏しいと言えるだろう。
守るべき基地があるわけでも、攻撃する基地があるわけでもない。
攻略戦や防衛戦に比べれば、遥かに戦略性は低い。
それが一般的な意見だった。
実際、基本的な戦術は索敵艦を早く出し、敵より早く敵本隊を見つける。
奇襲が出来ればよし、それが出来なくても自分に有利な戦場に相手を引き込みやすくなる。
もっとも、それはあくまで想定であって、基本は基本だ。
続いて表示される文字に、アレスは小さく息を吐いた。
クラウディス星域。
三つの恒星からなる無人の惑星系だ。
酷い地場嵐が吹き荒れて、レーダーなどの観測機器は使えない。
宇宙港から出発した宇宙船が、やってきた宇宙船にぶつかるほどだ。
とても有人惑星として開発ができる状況ではない。
当然、戦闘には酷く不向きであるが、そもそもクラウディス星域自体が同盟領でも辺境に位置する。隠し基地には最適な環境であるが、ヴァンフリート星域と違って見向きもされない理由がそこにあった。
そもそもこんなところで艦隊戦が起こるようになれば、同盟はおしまいだろう。
そんな状況では満足に索敵も出来ない。
当然、索敵艦が多く必要だろうが。
表示された艦隊数に、アレスは小さく笑った。
この戦術シミュレーターでは、総司令官が艦隊の総数を決定する。
限りある資源から、索敵艦や宇宙母艦の種別と数を戦場にそって選択する。
もちろん全てというわけではないが、ある程度までの艦隊種別を選ぶことができる。その後、総司令官は定められた数に応じて、艦隊を配分する。
当然、索敵艦を多くしてくれているかと思いきや、こちらに与えられたのは想像もつかなかった艦隊配分だ。
まず宇宙母艦を複数配備している。
そもそも宇宙母艦の数自体少なく、実際にも一つの分艦隊に一隻もあれば十分であり、下手をすれば存在しない場合の方が多い。
それを、アレスの分艦隊だけに三つ。
他にもミサイル艦など攻撃に長けた艦編成となっている。
頭痛を押さえながら、アレスは艦隊編成を行った。
どう考えても機動力や防御力には欠けて、さらに正面から撃ちあいにも弱い素敵な仕様。しかしながら、宇宙母艦を上手く活用すれば異様なまでの攻撃力を発揮する。
普通はそれが、発揮される前に潰れるために選択しないだろうが。
少なくともアレスなら、そんな編成をしない。
部隊を編成させていると、コンソールに通信が入った。
それもプライベート通信である。
『よう、アレス候補生』
[8]前話 [1]次 最後 [2]次話
※小説と話の評価する場合はログインしてください。
[5]違反報告を行う
[6]しおりを挿む
[7]小説案内ページ
[0]目次に戻る
TOPに戻る
暁 〜小説投稿サイト〜
利用規約/プライバシーポリシー
利用マニュアル/ヘルプ/ガイドライン
お問い合わせ
2024 肥前のポチ