しょうがないよね、効かないの彼だけだし。
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「・・・ガッ!!!」
深夜の船の甲板に、その声は響いた。全身を甲板に叩きつけられ、悶絶するその人影は、なんと【聖魔王】名古屋河鈴蘭その人だった。
「姉上!!」
その場所で彼女の帰りを待っていた睡蓮は、行きとは全く違う鈴蘭の姿に驚いた。彼女の能力で作った、世界中のどんな魔術兵装も凌駕するメイド服も、いつも彼女が身につけているサングラスも、彼女自身の体もボロボロで、血が滲んでいない部分を探すほうが難しい状況である。
「敵状視察だけだと言っていたではありませんか!戦ったのですか!?」
まつろわぬクトゥグアは、草薙護堂との決闘を望んでいる。その為の脅しとして、従属神二体も用意した。・・・しかし、護堂がクトゥグアを首尾よく倒せたとして、彼女に呼び出されたまつろわぬアフーム=ザーとまつろわぬルリム・シャイコースが消滅するという確証はあるだろうか?
まつろわぬナイアーラトテップが呼び出した従属神、まつろわぬ闇をさまようものは、ナイアーラトテップが消滅した時点で現界を保てなくなった。・・・しかし、それはあの神が、ナイアーラトテップのアーティファクト”輝くトラペゾヘドロン”によって召喚されていたからである。『ナイアーラトテップが”輝くトラペゾヘドロン”を維持出来なくなったからこそ、闇をさまようものは消滅した』のだ。
あの二体は、大元であるクトゥグアが消滅しても残る可能性がある。だからこそ、転移魔術のお陰で距離の概念が関係ない鈴蘭が、自分から偵察を望んだのだ。
彼女たちには、隔離世という切り札がある。あの場所に取り込むことが出来たのなら、周りを気にせず戦うことが可能なので、精神汚染を持っている二柱の神とでも有利に戦えるハズだったのだが・・・。
「・・・気持ち悪い。吐きそう。」
「今、どくたーとりっちを呼んできます!」
真っ青な顔をした鈴蘭。どうやら、かなり深いダメージを負っているようで、いつもの快活さは鳴りを潜めていた。立ち上がることさえも満足にできないらしく、甲板に突っ伏した彼女。そんな姉を見た睡蓮の行動は素早く、数分後にはドクターとリッチが、更に数分後には、他の【伊織魔殺商会】のメンバーがワラワラと集まってきていた。
「おやおや、盛大にやられたようだね。やはり、精神防壁では薄かったか。」
実は、クトゥルフの神が精神汚染の権能を持っていることを知っていたので、リップルラップルに頼んで精神防壁の魔術を掛けてもらっていた。その上で、数十キロも離れた場所から偵察しようとして・・・見事に防壁を抜かれたのである。鈴蘭の傷は、全て自傷行為であった。恐らく、敵は自分が見られていたことさえ気がついていないだろう。無差別に狂わせるこの権能は、とても厄介で恐ろしい権能であった。
「私の防壁を抜いて、神
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