第二十四話 そのベッドは俺のだぞ
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……」
「冬の時代が来る、そう思っているようです」
「冬の時代? 何かねそれは」
ビュコック司令長官が不思議そうな表情をした。どうやら司令長官はあまりTVを見ていないらしい。
「先日ある報道番組でこれからは軍人にとって冬の時代が来るだろうと言っていたのですが、結構それが軍内部に広まったようです」
「と言うと」
「これまでは定期的に帝国軍が攻め寄せ同盟軍はそれを撃退してきました。帝国軍が攻め込んでくる以上同盟軍は否応なく戦わざるを得なかったのです。政治家達も同盟市民もそれに掣肘をかける様な事はしなかった。軍人達はその中で武勲を上げ昇進してきた」
「ふむ」
司令長官が頷いている。半世紀を帝国との戦いで過ごしてきたのだ、そして兵卒から元帥にまで昇進した。思い当たるところが有るだろう。
「ところがイゼルローン要塞を奪取した事で戦争の主導権は同盟側に移りました。となると戦争をするか否かはその時の財政状況や政治状況が大きく影響する事になります。これまでのように自由に戦争をする事が出来なくなったのです。当然ですが昇進する機会も減ります」
「なるほど、それが冬の時代か……。皆が冬が来る前に肥え太ろうというわけだ」
「はい」
面白い意見だと思うしその通りだと思う。元来戦争とは非常に金がかかるものだ。物資も消費するが人命も消費する。その事にどれだけ金がかかるか……。現状では借金をしながら戦争しているが国家としては健全な姿とはいえない。国家としての健全性を取り戻そうとすれば当然だが政府は無駄な出費を削減しようとするだろう。その筆頭が軍事費になるのは目に見えている。
これまではそれが出来なかった。だが今はイゼルローン要塞が有る。イゼルローン要塞を利用しての防衛戦を展開すれば軍事費の削減は可能だろう。実際に政治家達の中にはそれを唱える者もいる。ジョアン・レベロ、ホアン・ルイ等だ。彼らは財政面、人的資源面から戦争の縮小を唱えている。
「肥え太れれば良いのだがな、冬を前に痩せ細れば冬を越せなくなる。冒険する前にその事に気付いて欲しいものだて」
ビュコック司令長官が溜息交じりに呟いた。全く同感だ、一文無しになって冬を越せずに凍死等というのは御免こうむりたい……。
宇宙暦796年 8月 30日 ハイネセン 統合作戦本部 シドニー・シトレ
目の前のTV電話が受信音を鳴らした。待っていた連絡だ、一つ息を吐いてから受信ボタンを押した。スクリーンにレベロの顔が映った、顔色が良くない、不吉な兆候だ。
「どうだった、レベロ」
『駄目だった、出兵に決まった』
呻く様な口調だった。
「あの出兵案が採用されたと言うのか?」
思わず声が掠れた。
『そうだ、採用された』
「分かっているのか、八個艦隊だぞ、八個艦隊!
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