9部分:第九章
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ではあちらに」
「はい」
こうして三人は事件現場の路地裏に向かった。そこは薄暗く寒い場所でありこの中にも雪が積もっていた。白い筈の雪が暗がりのせいで灰がかって見えていた。三人はその中を警官達に案内されて進む。
「あっ、これは警部」
「着いたのは一緒だったな」
「はい、どうやらそうみたいで」
スタッフの警官達は彼に応えて述べる。応えながら事件現場において作業を行っていた。
「それで被害者は?」
「やはり」
警部の言葉には首を残念そうに横に振ってきた。
「駄目でした。というよりは」
「またか」
「はい、いつもの通りです」
「そうか、やはりな」
警部はそこまで聞いてあらためて嘆息した。
「またか。一体何が楽しくてこんなことをするんだろうな」
「遺体を御覧になられますか?」
スタッフの一人が問うてきた。
「といっても見ないわけにはいかないだろう」
彼はコートからハンカチを取り出して答えてきた。答えながら手を拭く。
「そうだろう?」
「まあそうですが」
「それでも」
スタッフ達は警部に対してバツが悪い顔で答えてきた。
「あんまりなんで」
「やっぱり」
「あんまりでも何でも実際に見ないとわからないさ」
彼は浮かない顔で部下達に述べてきた。
「だからだ。案内してくれ」
「わかりました。それではこちらへ」
「うん。それでは」
部下達に応えた後で速水と沙耶香に顔を向けて声をかけてきた。
「貴方達も。宜しいでしょうか」
「はい」
速水はにこりと笑って頷いてきた。
「御願いします。相手のやり方がどうしたものか見ておきたいので」
「私も」
沙耶香も頷く。
「御願いします。見せて頂けるのなら」
「それでは。どうぞ」
こうして二人は路地裏の奥に案内された。そこではまるで紙切れの様に千切られ四散してしまっている人間だったものがあった。そう、人間だったものだった。
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