第五十一話 上からの返事その五
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「政治家としては知らないがあんた剣士としてはいいよ」
「そうか」
「面白いね。こういうの」
「面白いということはだ」
権藤は加藤の今の言葉からあらゆることを見抜いた。それはというと。
「降伏するつもりはないか」
「俺はそんな言葉は使わないからな」
だからそれはないと加藤も返す。
「全くな」
「そしてだな」
「羽根か。これならな」
「防げるか」
「この羽根達はあれだな」
既に加藤に何枚かが触れんばかりになっている。しかもその数は次第に増えて彼を覆い尽くさんとしている。
「触れるだけでもか」
「君の蝶と同じだ」
「だな。消えるか」
「そしてそのままでいてもだ」
触れなくてもだというのだ。
「やがて完全に君を覆い尽くす」
「そういう代物だな」
「この羽根達をどう防ぐ」
権藤は自身が出したその闇の羽根の中に消えていく加藤を見ながら彼に問うた。
「一体」
「こうするだけさ」
こう言うとだった。加藤はその手に持っている剣をあらためて握った。そして。
盛っている右手をスナップさせた。するとだった。
魔の濃紫の柱が彼の周りに無数に起こり螺旋状に動いた。その柱達がだった。
羽根達を瞬く間に消し去った。柱達はその動きのまま権藤に向かうかと思われた。だがそれはだった。
柱達が急に全て消えて終わった。加藤はそれを見届けてから述べた。
「力が尽きたよ」
「尽きたか、君も」
「何だ、あんたもか」
「そうだ。私も羽根を出し過ぎた」
それで彼もまた力を出し尽くしたというのだ。
「今日はこれで終わりだ」
「そういうことだな。今日は引き分けか」
「そうなるな」
「じゃあ俺は帰るけれどあんたはどうするんだ」
「私もここにいる理由はない」
闘うことが出来なければ戦場jにいることはないというのだ。
「私も去るとしよう」
「そうか。じゃあお互いにか」
「また会おう。しかしな」
「わかってるさ。なあ」
加藤は権藤から目を離して彼から見て左手に顔をやった。するとそこには彼がはじめて見る剣士が経立っていた。
彼、スペンサーを見て加藤はこう言った。
「あんた十人目の剣士だな」
「その通りです」
「声から話は聞いてるさ。十人目の剣士だな」
「スペンサーといいます」
「アメリカ空軍の大尉だったよな、確か」
「そのこともお聞きになられていますね」
「ああ、そうさ」
加藤はスペンサーに顔を向けながら答える。権藤もそのスペンサーに顔を向けてまじまじと見据えている。
「で、闘うんだな」
「私の目的、合衆国の永遠の繁栄の為に」
まさにその為にだというのだ。
「戦います」
「俺達は力はもう尽きた」
「それでもか」
加藤だけでなく権藤も言った。
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