第二部 文化祭
第30話 替え歌
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「はー……」
模擬街、エギルのカフェにて。和人が盛大な溜め息を吐いた。
「ちょっとキリト君、そんな盛大な溜め息吐かないでよー。わたしの運まで逃げちゃうじゃない」
明日奈が困ったように言う。
「だってアスナ……俺、人生初の補習なんだぜ」
「補習? なにの?」
「音楽の筆記テスト」
「点数は?」
「92」
「あら、そこまで悪くないんじゃない?」
「それがさ……」
*
それは、昨日のことだった。俺は放課後、音楽科担当の女教師に呼び出され、音楽室に向かっていた。
「……さて、一体なにがバレたものか」
俺は小さく呟いた。呼び出しを喰らうからには、俺がやらかしたなにかがバレたのだろう。
──なんだろう。
早パン? いや、最近やってないし。
学園抜け出し? いずれにせよ音楽には関係ないし。
テストの点だって悪かなかったし。
「失礼しまーす……」
俺は情けない声で言ってから、音楽室の扉を開けると、瞬時に頭を下げる。
「すみませんでした! 悪気はなかったんです!」
なにバレちゃったのか知らないけど。
「え、なんのこと?」
しかし先生はそう言って、首を傾げた。
「えッ……俺、いや僕今から怒られるんじゃ」
「違うわよー。……なにかやったの?」
「やってません」
心当たり複数あるけど。
「じ、じゃあ先生、なんの用事が?」
「あぁ……。あのね、桐ヶ谷くん」
先生がずいっと身を乗り出してくる。
「は、はい?」
俺は少したじろきつつ返した。
「私って美人よね?」
「はぁ!?」
いきなり何の話だ。
「私、もて余すほどの美貌に溢れかえっているのに……全然モテないの!」
「……はぁ」
それで俺にどうしろと。
「でね、桐ヶ谷くんモテるじゃない?」
「いや、俺別にモテてないですよ」
これに関してはなんの心当たりもない。……って。
「先生、なんでこっち睨むんですか!? 老けて見えますよ」
「失礼ね! さあ、サッサとモテる方法吐きなさい!」
「うわこわっ! てか知るか! 俺は帰りますよ!」
──そして次の日。何故か俺は強制的に音楽筆記テストの補習をやらされることになった。
しかし、おとなしく補習を受ける俺ではない。
「ちょっと待て! 聖職者がなにやってんだよ!」
職員室に殴り込み──まではしてないが。
「桐ヶ谷くんがテストで酷い点とってたから、補習させようと思って」
「92点のどこが悪いんだ! 学年平均60点前後だったぞ!?」
「うん。桐ヶ谷くん口悪いから、補習時間倍にしとくわね」
「別に普段は悪くないよ! あんたが訳わからんことす
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