6部分:第六章
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第六章
「私にとっては耽美と退廃こそが美酒なのだけれど」
「やれやれ、それは相変わらずですね」
速水もわかっているのか深くは突っ込まない。彼もまた笑うだけであった。
「私はいつも想い人は一人だというのに」
「ふふふ。全ては気が向けばね」
あえてそれには答えずはぐらかしてみせてきた。
「それじゃあ。いいわね」
「はい。それでは」
「私も御一緒ですよね」
「ええ、是非共」
速水が彼に答える。
「羊を楽しみましょう」
「はい、それでは」
こうして警部を入れた三人はその羊料理を食べにレストランに向かった。そのレストランは外を雪で奇麗に化粧されまるで日本にあるようには見えなかった。何処か欧州にあるような、そうした雰囲気を持つ店であった。三人はその店の窓際の席に座って注文したコースの料理を楽しんでいたのであった。飲み物はジュースであった。ただし葡萄のジュースである。二人はそれをワインに見立てて楽しんでいるようであった。
「ワインみたいですね」
警部はガラスのグラスにあるその濃紫のジュースを見て言ってきた。食べているのはラムのステーキであった。チーズがベースの白いソースをかけた濃厚な味のステーキであった。
「そのジュースは」
「これも中々いいものでしてね」
速水は笑顔で警部に答える。答えながらジュースのグラスを右手に掲げている。
「濃厚な甘さが口を支配しますから」
「そうですね」
警部もその言葉に頷く。彼はステーキをかなり必死に食べていた。どうやら好きなようだ。
「それに雰囲気もありますし」
「それですね」
速水はその雰囲気というものに反応を示してきた。
「それが大事なのですよ。お酒に関しては」
「同感ですね。お酒は雰囲気です」
警部はその言葉に同意する。うん、うんとしきりに頷いている。
「それを楽しんで飲まないと。やはり面白くありません」
「何かあったのですか?」
沙耶香がここで警部に尋ねてきた。彼女は今ステーキを食べ終えナプキンで口を拭いていた。それから白いパンを食べはじめていた。白いパンが千切られ紅い唇の中に入っていく。白と赤の対比がここでも映えた。
「お酒に関して」
「いや、女房がですね」
ここで彼は自分の家庭を出してきた。苦笑いであるが同時に照れ臭そうであった。
「あれなんですよ。子供の前ではあまり飲まないように言いまして」
「それはまたどうしてでしょうか」
「子供の教育で。しかもお小遣いが少なくて飲むとなると」
沙耶香に答えて言葉を続ける。
「自動販売機のビールをちょこっとですよ。いや、お金があったら居酒屋ですが」
「こうしたお店ではありませんか」
「滅相もない」
首を横に振ってそれを否定する。彼にとっては無茶な話であるようだ。
「そんなのはと
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