34部分:第三十四章
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第三十四章
「お寿司を食べに行きましょう」
「はい。それにしても珍しいですね」
「何がかしら」
速水の言葉にふと顔を向ける。
「珍しいのは」
「いえ、貴女が和食を召し上がられるというのが」
「そういえばそうね」
自分でもそれに気付く。ふとそうした顔になる。
「自分でも今わかったわ」
「私もですよ」
速水も笑って言葉を返してきた。
「それは」
「そうね。けれどたまには日本酒もいいわね」
「はい、確かに」
「それじゃあ行きましょう。お寿司と日本酒を楽しみに」
「乗り気ですね」
「勿論よ」
また笑って述べる。その顔が全てであった。
「だからこそね」
「それにしても今回はまた」
「危険な相手だったわね」
「魔界は相変わらず危険な場所のようですね」
冷静に述べる。魔界についてはよく知っている。その危険さもまた。
「ああした方がおられるところを見ても」
「あれを利用する人が出るとまた面白いことになるけれどね」
「面白いことですか」
「そうよ。彼女とかね」
高田依子のことだ。二人にとっての宿敵である。宿敵であるからこそ彼女との戦いもまた面白い、つまりはそういうことであった。
「そして私達も」
「魔界の力を使うと」
「そういうことになるわね。それじゃあ」
ここまで言って踵を返してきみせた。速水もまた。
「行きましょう」
「ええ。それでは」
こうして戦いを終えた二人は勝利の美酒を味わいに向かう。それが終わるとそのまま別れ次の日警部に事件が終わったことを知らせた。その後で速水は帰路についた。
速水は札幌駅にいた。その彼に声をかける女がいた。
「貴女ですか」
それはやはり沙耶香であった。彼に顔を向けていつもの妖艶な笑みを浮かべていた。既に雪は止み白銀の世界もまた終わろうとしていた。
「迎えに来て頂いたのですか?」
「ええ、そうよ」
その笑みのままで彼に答える。
「気が向いてね」
「左様ですか。貴女は何で東京まで」
「私は飛行機よ」
速水に対して述べてきた。
「それで帰るつもりよ」
「飛行機でですか」
「少し早く帰りたくてね」
「またどうして」
「それもまた気が向いたから」
かなり気紛れな調子であった。それをそのまま口にする・
「それだけよ」
「そうですか。では私もまた」
「気が向いたから電車なのかしら」
「そうです。まあ長旅を楽しみます」
静かに笑っての言葉であった。
「ゆっくりとね」
「じゃあ私は飛行機の中で」
「どうされるのですか?」
「スチュワーデスの娘と楽しもうかしら」
笑って言うのだった。
「空の上での情事でも」
「おやおや、相変わらずですね」
その言葉を聞いてまた笑う速水であった。沙耶香の漁色家ぶりは
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