第一部
第四章 〜魏郡太守篇〜
四十八 〜郷挙里選〜
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とする。
「待たれよ」
「もう結構。太守様、勝手になされるが宜しいでしょう」
「勝手にしろ、と仰せられるか」
「如何にも。横紙破りに付き合えるほど、我々も暇ではありませぬからな」
「その言葉、二言はござらぬな?」
「くどいですぞ!」
「……皆。今の言葉、聞いたな?」
その場に居合わせた仲間と官吏らが、一斉に頷いた。
豪族共は憤慨しつつ、全員立ち去った。
その夜。
改めて、主立った者が集まった。
「上手く行きましたね」
「売り言葉に買い言葉、って奴か。しかし、旦那もえげつないねぇ」
「ふっ、確かにそうかも知れぬ。だが、連中も堪え性がないな」
確かに、私の案では豪族共に何の利もない。
無論、説得するのならば言いようもあるのだが、最初からそのつもりはなかった。
勝手にしろ、そう言わせるのが目的であったからな。
「どちらにせよ、これで豪族達は自らの責務を怠り、国の法に反した事になります。歳三様の思惑通りになりました」
「豪族さん達が推したかった人物でも、問題があれば此方の判断で不採用に出来ますしねー」
「ただ、その分わたし達の仕事は増えますけどね」
苦笑する愛里。
「済まぬな。だが、愛里とて、あのような目に遭う者を出したくはあるまい?」
「勿論です。ですから、異を唱えるつもりはありませんし、歳三さんの判断に間違いはないと思います」
「うむ。疾風、この事、広く郡内に流布せよ。豪族共が、後から取り消しが出来ぬようにしておきたい」
「そう思いまして。既に、手の者を発たせました」
流石、心得たものだ。
「面談は、星、愛紗、彩も加わるように」
「はぁ……。我らも、ですか」
「し、しかし私は武骨者。宜しいのでしょうか?」
「殿のご指示とあれば従うのみですが……」
「お前達が躊躇う気持ちはわかる。だが、一軍の将として、人を見る眼を養うのは必要な事だ。良いな?」
三人は戸惑いの色を隠せないまま、頷いた。
「お兄ちゃん、鈴々は何もしなくていいのか?」
「そうだな。……鈴々は、学問試を受けてみるか? どうだ、愛紗?」
「いいお考えかと。また最近、勉強を怠けているようですから」
「や、やっぱりいいのだ!」
慌てて、鈴々は走り去る。
「こら、待て鈴々!」
一座に、笑いが広がった。
そして。
従来とは違う形となった郷挙里選だが、予想以上に優秀な人材を集める事に成功。
郡太守の推挙、という名目で行った、魏郡以外の者に対する募集にも数多くの申し込みがあった。
それなりに名の知れた人物も混じっていたようで、愛里がひどく喜んでいたのが印象的であった。
……その分、必然的に皆、寝不足気味とはなったが。
「歳三さん。ぼやっとしてないで、手を動かして下さい」
そう言い
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