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至誠一貫
第一部
第四章 〜魏郡太守篇〜
四十八 〜郷挙里選〜
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いご処置でしたが、やむを得ますまい。自業自得というものですな」
 流石に、郭図らを擁護する発言はない。
「二度と、あのような者を官吏として登用すべきではない。ご一同、この点にはご異存ないでしょうな?」
「無論ですとも。推薦する我々にしても、あのような者を再度出しては恥というもの」
 一人の豪族の言葉に、全員が頷いた。
「そこで、拙者より提案がござる。お聞き下さるか?」
「ほう、太守様に。是非、伺いたいものですな」
 皆の視線が、私に集まる。
 中には、成り上がり者めが、と言わんばかりの軽蔑も混じっているが、気にする必要もあるまい。
「では、申し上げる。まず、本来の郷挙里選とは何か。各々方、それを思い起こしていただきたい」
「…………」
「各里より、素行に問題がなく、優れた人物を選ぶ制度。それはまず、ご一同もよくおわかりの筈」
「当然ですな」
「人選そのものは各里の有力者、つまりは貴殿らが行い、推挙する。郡太守はそれを元に、豪族のご一同と協議の上、官吏として採用する。この流れそのものは、国が定めた制度故、変えるべき箇所はござらぬ」
 何を当たり前の事を、という顔をしている者が大半だな。
 だが、本題はここからだ。
「調べたところ、定められているのはそこまでにござった。それ以外は各太守の裁量次第……と」
「太守様。はっきりと仰っては如何ですかな?」
 豪族の一人が、苛立ったように言う。
「では、申し上げよう。拙者は、選考を私とご一同の協議のみ、とせず、段階を踏むべきと存ずる」
「ほほう。それで?」
「まず、志望者に自らが望む部署を選ばせ、その部署の官吏を相手に、口述にて学を問わせる。然る後、私と貴殿らにて、口述試験を通った者と個別に面談を行う。その結果を、従来通りに協議で決める……それを加えたいと存ずる」
 豪族共が、互いに顔を見合わせる。
 何人かは、ひそひそと密談を始めた。
「太守様。それは候補者全員に対して……という事ですかな?」
「然様。そうでなくては意味がござらぬ」
「はっはっは、これはまた。太守様はご冗談が上手いようで」
 その者は、高々と笑ってから、
「太守様。候補者が何人いるか、ご承知なのでしょうな?」
「無論にござる」
「その為に、官吏だけでなく、我々も付き合わされると? 何日かけるおつもりか?」
「そうだそうだ。その間、何日里を不在にさせるつもりだ!」
「その為の費えは誰が持つと思っているのだ」
「第一、それでは我らが信用されていないという事ではないか。如何に太守でも、無礼極まりない!」
 まさに、非難囂々だ。
「馬鹿馬鹿しい。まるでお話になりませぬな」
「これでは協議など無理。どうやら太守様は、官吏の登用をする気がないようですな」
 そう言って、豪族共は皆、席を立とう
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