第一部
第四章 〜魏郡太守篇〜
四十八 〜郷挙里選〜
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りますが」
「その上で、私と豪族の主立った者が同席の上、見分を行う。これならば、一方的な選抜と言われる事はあるまい?」
「……確かに、今までの方法よりは公正だと思うけどさ。ただ、いくつか問題があると思うぜ?」
「無論だ。何よりも、豪族共を説得する必要があるな」
「そうですね。ただ、郭図様の一件で苦い思いをしている方も少なくない筈です。素直に協力していただけるかどうか……」
「だが、他によき思案が思い浮かばぬ。あまり時間もかけられぬであろうしな」
私の言葉に、二人は考え込む。
「旦那。この案、他の人には?」
「まだ話しておらぬ。私の腹案だ」
「ともかく、一度稟様達を交えて、検討すべき事案かと。基本方針は僕も賛成ですけど」
「良かろう。お前達二人が中心となり、取り急ぎ進めてくれ」
「あいよ」
「御意です」
二人が下がってから、私は推薦者の一覧に目を通して見た。
姓名に出身地、略歴。
そして推薦者である豪族からの人物評。
……無論、推薦する以上、佳き事ばかりが並べられている。
鵜呑みにするならば、全員をそのまま官吏として登用する事になるであろうな。
だが、私がこの郡に対して責を負う以上、それは許される事ではない。
郡の官吏は、基本的にその郡の官吏であり続ける。
私自身は、いつまでこの地にいるかはわからぬが、官吏らはずっと、この魏郡の庶人らと関わり続けるのだ。
迂闊な者を選んでは、将来の禍根となる恐れすらある。
そう考えると、慎重を期すに越したことはない……それが、私の想いだ。
「歳三さん、お待たせしました」
愛里の声で、思考を中断する。
「何かあったんですか? 嵐さんと元皓さん、何やら難しい顔をされていましたけど」
「うむ。その事だが、愛里にも呼び出しがある筈だ」
「私も、ですか?」
首を傾げる愛里。
とにかく、皆で知恵を出し合えば、どうにかなるであろう。
そんな事を思いながら、私は愛里が置いた書簡に、手をつけ始めた。
一週間後。
豪族の主立った者を、ギョウへと招集した。
郷挙里選での推挙者も、同時にギョウへと集まったようだ。
「初対面の御仁もおられるであろう。拙者が、郡太守の土方だ。見知り置き願いたい」
「此方こそ、高名な土方様にお会い出来て光栄ですな」
世辞か本心かは知らぬが、豪族共は下手に出てきた。
一人一人が名乗りを上げるが、当然、聞かぬ名の者ばかりであった。
「それで、土方様。此度の郷挙里選、何やらご存念がおありとか」
「然様。……先だっての一件、皆の衆も存じておられようが、真に残念至極な限りであった」
「私腹を肥やし、あろう事か年端のいかぬ少女を慰み者にしていたとか」
「全く、不届きな者共にございましたな」
「迅速で手厳し
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