第一部
第四章 〜魏郡太守篇〜
四十八 〜郷挙里選〜
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、振り返りながら遠ざかっていく。
「城門を閉じよ」
「……宜しいのですか?」
「ああ」
名残惜しいのは事実だが、如何に未明とは申せ、あまり城門を開けたままにしておくのは好ましくない。
城門が閉じられていく音を聞きながら、私は踵を返した。
翌朝。
執務室に出向くと、元皓(田豊)と嵐(沮授)が待っていた。
「太守様、おはようございます」
「おはよう、旦那」
「うむ。朝から二人揃うとは珍しいな」
愛里(徐庶)と違い、二人は郡内に出向く事が多い。
各々に役目があり、一日姿を見ぬ日も度々である。
……ただ、先夜の一件から、二人が共に在る時間が増えたようだ、と皆が口を揃えてはいる。
下衆の勘ぐりをするつもりはないが、つまりはそういう事なのであろうな。
「新たに官吏を採用する時期が来たので、そのご相談にあがったんです」
「今のところ、以前と同じ郷挙里選で、ってなるんだけどさ。これ、旦那と豪族どもの協議になるからね」
「そうか。具体的に、私は何をすれば良い?」
嵐は、書簡を一つ、私の机に置いた。
「それが、各里から上がってきた、推挙者の一覧さ。今までのやり方だと、それを見て、旦那が落款をして終わりだね」
「……前の太守様は、豪族の方々となあなあで選ばれていましたから。ただ、その結果がどうなったかは……」
言わずもがな、だな。
折角、大掃除が済んだばかりのところに、また汚泥を持ち込む訳にはいくまい。
「一つ聞くが。郭図らと繋がりのある、若しくはそれが疑われる人材が混じっている可能性は?」
「あるだろうね」
「明確に関わっていたという者はさすがに少ないでしょうけど。ただ、郭図様達が絶大な権力を誇っていたのも、いろいろな利権を握っていた事が大きいですから。当然、豪族の方々にもそれは残っているでしょう」
「利が全て悪とは申すまい。全ての人間が、無私でいられる筈がないからな。だが、それを無制限に見逃す訳にはいかぬ」
「そこなんだよね、問題は。頭からこの一覧の人材を否定すれば、豪族共は旋毛を曲げるだろうし」
「第一、それでは郷挙里選が成り立たなくなります。この制度は、郡太守と豪族の協調を前提としていますからね」
官吏の絶対数が不足している以上、執り行わぬ、という選択肢はない。
そもそも、それを理由に官吏の採用を中止すれば、郡内に要らぬ波風を立たせる事にもなろう。
最悪、朝廷からそれを理由にこの地位を追われる事になるやも知れぬ。
それでは、皆がここまでやってきた苦労や努力が、全て水泡に帰してしまう。
「ならば、学問試を行うというのはどうか?」
「学問試?」
「そうだ。官吏として登用する以上、当然学問は修めていよう。それをまず見極める」
「試験、という訳ですか。確かに、一定の目安にはな
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