第二十三話 ガキの相手は御免だな
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し話しをする機会が有った。
「爵位、領地を返上させたか……、国務尚書も当てが外れたかな」
どういう意味だろう、私が疑問に思っているとクレメンツ提督が笑みを浮かべた。
「平民達の多くは閣下に憧れの様なものを抱いている。国務尚書にとっては閣下は少々厄介な存在になりつつあるんだ」
「はい……」
私もそうだと思う、貴族に一歩も譲らない姿は平民達にとっては英雄の様に見えるかもしれない。
「伯爵夫人を下賜する事で貴族の仲間入りをさせる、いや仲間入りをしたと平民達に思わせる、そういう狙いが有ったと思う」
「つまり平民達に失望させる狙いが有ったという事ですか?」
「そうだ」
溜息が出た。この世界は魑魅魍魎の世界だ。
「ですが閣下は返上させました」
「そうだな、平民達は喝采を送るだろうな。だが国務尚書がどう思うか……。段々難しくなるな、難しくなる……」
提督は“難しくなる”と二度繰り返した……。
帝国暦 487年 7月 13日 オーディン 新無憂宮 マグダレーナ・フォン・ヴェストパーレ
新無憂宮の南苑に向かって歩いていると彼方此方で宮廷雀達の囀る声が聞こえた。柱の陰で三人の男が熱心に話している。
“御聞きになりましたかな、グリューネワルト伯爵夫人の事”
“ええ、聞きましたぞ。ヴァレンシュタイン総参謀長に下げ渡されるとか”
“驚きですな、伯爵夫人が総参謀長とはいえ平民にですか”
“罪を償え、そんなところですかな”
“なるほど”
笑い声が上がった。
無視して先を歩くと今度は着飾った女達が四人ほどいた。
“御聞きになりまして、グリューネワルト伯爵夫人の事”
“ええ、聞きましたわ。ヴァレンシュタイン総参謀長にお下げ渡しになるとか”
“総参謀長は爵位も財産も全て返上するならお受けすると言ったそうですわ。自分より金持ちの女など御免だと言ったとか”
笑い声が上がった。
“総参謀長も迷惑に思っていらっしゃるのでは有りませんの? 総参謀長が怪我をしたのも元はと言えばあの方の所為、それにあの方、総参謀長よりも御年上でしょう?”
“そうですわね、それでそんな事を言ったのかも。伯爵夫人から断って欲しいという事かもしれませんわ”
“陛下に縋りついてちょっと涙を見せれば簡単ですものね“
口調からは露骨なまでの侮蔑が感じられた。思わず言い返しそうになったが堪えた。先ずはアンネローゼに会わなくては、それに私がここで彼らを叱責しても彼女のためにはならない、むしろ陰にこもってネチネチと攻撃するだろう。
南苑の奥にアンネローゼの住居は有った。決して華美では無い、穏やかで繊細な感じのする部屋。部屋は住人の性格を表すというのが良く分かる。アンネローゼは一人ポツンとベランダに居た。いつもそうだ、この部屋には客
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