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銀河英雄伝説〜悪夢編
第二十三話 ガキの相手は御免だな
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「中佐、中佐には分からんだろうが皇帝が寵姫を下賜するというのは臣下に対する信頼の証なのだ。断る事は出来ん」
クレメンツ提督に諭された。私が不満を持っていると思ったらしい。まあ理屈は分かるんだけど感情では納得出来ないのよ。ベーネミュンデ侯爵夫人もグリューネワルト伯爵夫人もちゃんと面倒見られないなら寵姫になんかするなって言うの。

「負傷した閣下に償え、そういう意味も有るのでしょう」
「それも有りますが平民に下賜されるのですからね、グリューネワルト伯爵夫人を快く思っていない人達にとっては溜飲の下がる思いでしょう」
「なるほど、不満を散らそうというのですな」
「そうだと思います。そして寵姫を下賜するのだからしっかり帝国を守れという事でしょう」
クレメンツ提督が何度か頷いた。

「伯爵夫人を妻とされますか……」
「もう伯爵夫人では有りませんよ」
「というと?」
「迎え入れる条件として爵位、領地など陛下から頂いたものを返上する事を約束させましたから」
え? ビックリ。クレメンツ提督も目を見開いている。閣下が悪戯っぽい表情で笑い声を上げた。

「今では無一文に近いかもしれませんね」
「それは……」
クレメンツ提督が絶句してから苦笑を浮かべた。そんな幾らなんでも無一文は酷い、そう言おうとした時だった。

「私は平民である事に満足しているんです。あんな馬鹿共と一緒にして欲しく無いですね。爵位とか領地などで懐柔される等と思われたくない。私の息子がグリューネワルト伯爵になる? だから喜べ? 愚劣にも程が有る!」
もう閣下は笑っていなかった。見えたのは抑え切れない怒気。応接室の空気が一気に重くなった。

どれほどの時間が経ったのか、閣下がすっと怒気を収めた。
「私は疲れましたので今日は帰らせて貰います」
「分かりました」
「明日はリハビリに行きますから次に元帥府に来るのは明後日になります。何か有りますか?」

「面会希望者が一人います。パウル・フォン・オーベルシュタイン大佐、出来るだけ早くお会いしたいと」
「パウル・フォン・オーベルシュタイン大佐? 中佐、それは……」
「はい、例の敵前逃亡者です」

クレメンツ提督が驚いた様な声を出した。気持は分かる、私も彼が訪ねてきた時は驚いた。パウル・フォン・オーベルシュタイン大佐、イゼルローン駐留艦隊から逃げ出した男……。顔色の悪い暗い表情の男性だった……。閣下が少しの間考えた。会うのだろうか? 印象から言えばあまり会う事を薦めたく無い人物だ。

「急ぐのであれば今日は自宅に居ると伝えてください。急がないのであれば明後日、元帥府に居ると」
「分かりました、大佐に連絡を取ります……」
閣下は会う事に決めた。何を考えたのか……。


閣下が帰宅した後、クレメンツ提督と少
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