第一物語・後半-日来独立編-
第四十八章 その意志の強さ《1》
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父親は持病を抱えており、余命は後十年も無かったと言われている」
「だから娘に竜神を渡したのか」
これが意味することとは、
「これまで委伊達家の歴史を辿っていけば解る筈だ。竜神の宿り主となった者達の、ある共通点を」
一瞬でぴんと来た。
数日前、監視されていた病院から脱け出して、委伊達家のことについて調べていた時。
あることが目についた。
“同じ”境遇。
託された側として、気になることが。
「……短命……」
そう。竜神の宿り主は代々短命なのだ。
宿り主になると、その約十年前後で亡くなっている。
最長でも、委伊達・奏鳴の父親の四十七歳。
宿り主になったのは十七の時であるが、あれは異例中の異例だったらしい。
宿り主となってから三十年も、その命を繋げることが出来たのだ。
それは力の象徴でもあり、歴代でも一、二の支持率を誇る。
しかし、殆どの竜神の宿り主は二十代でその命を落としている。
八頭はセーランに詰め寄り、こう問うた。
「委伊達・奏鳴の余命は後五年だ。いいか、後五年だぞ。その期間のなかで、お前は彼女に何をしてやれる」
急に告げられた余命に、その短さからでもあるが驚いた。
後、五年。
例え救出出来たとしても、たった五年しか生きられない。
威圧に似たものを八頭から感じとり、数歩後退りをしてしまった。
八頭はそれを見て、一先ず不合格の判定を下した。
セーランは考えた。
後五年で何が出来るかを。
まず最低一年は世界を巡り、崩壊進行を解決するために潰れる。
残り四年。
また一年は崩壊進行後の対処で忙しくなるため、やはり一年は潰れる。
残り三年。
まともに向き合える時間が、たった三年しかない。
まだお互いをよく知らない二人。
互いを知るのにそう時間は掛からないだろう。
だがたった三年で、生きていてよかったと、そう思わせることは出来るのだろうか。
あの時死なずにいてよかったと、そう思わせることが出来るのか。
限られた時間で、自分は彼女に何が出来る。
答えの出ない自問を繰り返すだけで、答えなど出る筈がなかった。
浅はかだった。
命を前にして、彼女にとって自分は何も出来無い者だったことをセーランは痛感した。
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