第一物語・後半-日来独立編-
第四十八章 その意志の強さ《1》
[3/6]
[8]前話 [1]次 [9]前 最後 最初 [2]次話
目を開けるで御座る! ここで倒れては駄目で御座るよ!」
後片付けの時に困るからである。
声は聞こえるが、身体は動かなかった。
動かす気力も無く、顔が横へと勝手に向く。
そこで見えたのはスパッツ。
下着の一種でもあるもの。
魅鷺の太股に張り付き、絶妙に肉との段差を付けている。
これぞ、変態。
男子のクラスメイトでよく好みの話しをするが、今度好みの話しをする時はスパッツが好みと答えよう。
「スパッツは下着で御座った……」
その一言を残して、介蔵は力尽きた。
「介蔵殿!? 介蔵殿――――!!」
身体を必至に動かすが、目を覚ますことはなかった。
それでも魅鷺は何度も声を掛け続け、起きるようにと続けた。
二人のいる場所に、冷たい風が吹いた。
一つの茶番の終わりを告げる、冷たい風が。
●
西貿易区域を、同じ西から見ている青年が一人。
右腰に二本の刀を携え、誰かが来るのを待っていた。
後、三十分。
映画面|《モニター》越しに、仲間から連絡が来たのだ。
宇天の長が解放されるまでの、残された有余を伝えに。
解放が始まっては、解放場による結界により近付けなくなる。
解放場は元は神を葬|(はぶ)るための道具であり、同時に流魔分解を引き起こす大型処刑兵器でもある。
過去には魔物を処刑した例もあり、解放場と言うだけで兵器となんら変わらない。
草木が踊る、人気の無い朽ち果てた村には彼以外誰もいなかった。
木造の家には苔が生え、所々虫にかじられた後がある。
地面には雑草が生い茂り、枯れ葉が無造作に落ちていた。
そんななかで、青年は自分がしていることが正しいのかを自身に問うていた。
宇天の長のことを思うならば、これ以上苦しませないために解放を行わせた方がいいのだろうか。
解放は痛みを感じず、ただ流魔に分解されて、その果てに身体全てを分解して解放完了とする。
しかし、もし、宇天の長が生きる意味、希望を見出だせたのならば、苦しみに抗い生きようとするだろう。
だから自分は、後者の方を選んだ。
生きたいと願うのならば、自分はそれに全力を尽くして応えると。
亡き家族の魂が眠るこの場所で、もっとも宇天の長に近付けるであろう者を待っていた。
すると、耳をくすぐる木々が枝や葉をぶつけて鳴る音。
時折、人の声が聞こえる。
「来たか」
声は男性のもの、しかしまだ若さの残る声だ。
青年は着物に似た服の裾を正し、声のする方を向く。
「見極めさせてもらうぞ、お前の意志を」
徐々に声は近付き、比例して木々がうるさく音を立てる。
距離は近い。
もうすぐで来るだろう。
「やっほ――――い!」
上から声がした。
木々の上を何かが通り過ぎ、丁度自分
[8]前話 [1]次 [9]前 最後 最初 [2]次話
※小説と話の評価する場合はログインしてください。
[5]違反報告を行う
[6]しおりを挿む
[7]小説案内ページ
[0]目次に戻る
TOPに戻る
暁 〜小説投稿サイト〜
利用規約/プライバシーポリシー
利用マニュアル/ヘルプ/ガイドライン
お問い合わせ
2024 肥前のポチ