暁 〜小説投稿サイト〜
占術師速水丈太郎 白衣の悪魔
28部分:第二十八章
[2/2]

[8]前話 [9] 最初 [2]次話
以上ではないのよ」
「それ以上ではないのですか」
「ええ。ただ」
 沙耶香は言う。
「気が向けばね。その時を待っていてくれたらいいわ」
「残酷な方です」
 速水はそれを受けて右目を細めさせてきた。左目はまだ見えはしない。
「そうして私の誘いを断り続けられるのは」
「だから気が向けばよ。その時よ」
 それをまた言う。
「いいわね。それで」
「それで?」
 話が変わる。速水もそこに顔を向ける。
「まずはこれでいいにしろ。肝心なのはこれからよ」
「戦いですね」
「そう。わかっているとは思うけれど」
 バーの中の薄暗い光の中で沙耶香は言う。その言葉は闇と光の中で静かに響く。女としては低音でその中に艶がある。そうした声であった。
「相手は大変な存在よ」
「残虐なだけでなくその力もまた」
「だからこそよ」
 沙耶香はまた言うのだった。
「私も。あそこまでとは思っていなかったわ」
「それは私もです」
 速水もその言葉に頷く。
「あそこまでだとは」
「あれだけの殺戮は伊達ではないということね」
 沙耶香はまた述べる。冷徹な目になっていた。
「力と。心が」
「恐ろしいまでに残虐な心ですね」
「しかも無邪気でね」
 この二つが合わさった時最悪の悪夢が完成する。即ち子供こそが最も恐ろしい悪夢を作り出すことができる存在なのだ。子供の心を持つ者と言っていいだろうか。
「さて」
 速水はここでその手にしているスクリュー=ドライバーを飲んできた。そのうえでまた言う。

[8]前話 [9] 最初 [2]次話


※小説と話の評価する場合はログインしてください。
[5]違反報告を行う
[6]しおりをはさむしおりを挿む
しおりを解除しおりを解除

[7]小説案内ページ

[0]目次に戻る

TOPに戻る


暁 〜小説投稿サイト〜
利用規約/プライバシーポリシー
利用マニュアル/ヘルプ/ガイドライン
お問い合わせ

2024 肥前のポチ