暁 〜小説投稿サイト〜
銀河英雄伝説〜生まれ変わりのアレス〜
大会〜予選〜
[3/5]

[8]前話 [1] [9] 最後 最初 [2]次話


 見れば、アメーデオが小さく笑っている。
「戦いは終わりだ。言ってくるといい」
「すみません……」
 小さく頭を下げると、スーンは走りだした。
 友人におめでとうと、告げるために。

 + + +
 
 ワイドボーンが表彰状を受け取り、下がる。
 シトレ学校長が下がれば、そこで一連の流れは終了した。
 テイスティアが嬉しそうに拳を握り、コーネリアがそれを見て楽しそうに微笑む。

 ローバイクは変わらずの仏頂面で、ワイドボーンが振り返り、五人に見せるように表彰状を広げた。
 同時に、全員が頷いた。
 瞬間――それまで、押さえつけられていた声が会場に広がった。
 大きな歓声に、テイスティアがびくりと身体を震わせて、笑いを誘う。

 準備を含めれば、長く――そして、短い戦いが終わりを告げた。
 残すところは、あと二戦。
 ラップ……そして、ヤン・ウェンリーか。
 名将と戦うことは嬉しくもあるが、これまでのように簡単ではいかないだろう。
 いや、このグループも決して簡単と呼べるものではなかったが。

 ようやく立ち直った敵チームの人間が、こちらに向かって言葉をかけてくる。
 おめでとうと告げる四学年の主席――シュレイ・ハーメイドの差し出す手を、ローバイクが困惑したように手を握り返していた。
 テイスティアの方も、彼の変化は良いように見られているようだ。

 クラスメイトなのか、敵となった一学年を含めて複数の人間に囲まれ、髪をぐしゃぐしゃにされている。
 テイスティアは困ったように、それでも嬉しそうに微笑んでいた。
 さすがにこちらは、フォークは近づいてこないか。
 見れば、クラスメイトの彼はいまだに筺体に座ったままだった。

 呟くことをやめて、モニターをじっと見つめている。
 事実を理解するまでにもう少し時間がかかるかもしれないな。
 小さくため息を吐きながら、大きな歓声に、アレスは耳を塞いだ。
 誰もが楽しそうに、そんな中で、ただ一人、ワイドボーンだけには誰も近づかなかった。
 元より人づきあいが良くない性格である。

 それでも機嫌は良いらしい。手にした表彰状を撫でて、微妙に微笑んでいる。
 誰も近づきたくないだろうと、アレスは理解した。
「あれ……」
「アレス!」
 大きな声がして、振り返ると笑いながら駆け寄ってくる友人の姿がある。

「おめでとう、アレス!」
「そんな大きな声を出さなくても聞こえているよ、スーン」
「そうかな。凄い歓声だよ」
 周囲を見るように手を広げれば、こちらに近づかない面々が声をかけている。
 おめでとうという言葉から、凄いという褒め言葉まで。
 中には『金返せ』という物騒な言葉もあったが。

「注目されたのは、わかった」

[8]前話 [1] [9] 最後 最初 [2]次話


※小説と話の評価する場合はログインしてください。
[5]違反報告を行う
[6]しおりをはさむしおりを挿む
しおりを解除しおりを解除

[7]小説案内ページ

[0]目次に戻る

TOPに戻る


暁 〜小説投稿サイト〜
利用規約/プライバシーポリシー
利用マニュアル/ヘルプ/ガイドライン
お問い合わせ

2025 肥前のポチ