第二十二話 俺にも矜持という物が有る
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御働きにより帝国は内に外にその武威を輝かせております」
何の冗談だ、外はともかく内に武威を輝かす? 内乱鎮圧で忙しいなんて国家としては末期だろう。もう少し考えて喋れよ。リヒテンラーデ侯も顔を顰めているぞ。
「そこで陛下は総参謀長の御働きを嘉み、グリューネワルト伯爵夫人を総参謀長に遣わすと仰せられました」
「……遣わすとは一体……」
良く意味が分からん。不自由してるだろうから看護させるとでも言うのか? 問い掛けると宮内尚書はちょっともったいぶるそぶりを見せた。
「総参謀長に伯爵夫人を御下賜されるとの事です」
「……陛下の御寵愛の方を拝領する等怖れ多い事です、御辞退申し上げます」
何考えてるんだ、この馬鹿! ラインハルトと義理の兄弟になれってか? 元帥に出来ないからってそんなわけの分からん物を押付けるな!
「そう申されますな、お二人に御子が出来ればその子はグリューネワルト伯爵、貴族になるのです、喜ばしい事ではありませぬかな。それに伯爵夫人は豊かな所領をお持ちです」
ノイケルンが卑しい笑みを浮かべた。反吐が出そうな笑みだ。
「誤解なさらないで頂きたい、小官は平民に生まれた事を愧じてもいなければ悲しんでもいません。貴族に生まれたいと望んだことも無い。伯爵夫人がどれほど豊かな所領をお持ちなのかは知りませんが何の興味も有りません。御辞退申し上げると陛下にお伝えください」
言い終わってすっきりした。ノイケルンと国務尚書が鼻白んでいる、ざまあみろ。このクズ共が!
国務尚書がきまり悪そうに咳払いした。
「誤解してもらっては困る。宮内尚書は卿の出自を卑しんだわけではない。そうであろう?」
「も、もちろんです。そのようなつもりは有りません」
その割には品の無い笑顔だったがな。
「伯爵夫人を卿に下賜するというのは夫人を卿に託したいという陛下の願いなのだ。伯爵夫人本人も了承している」
なんだ、また妙な事を言いだしたな。
「例の一件で卿は重傷を負いイゼルローン要塞が奪われた。あの一件さえ無ければイゼルローン要塞の陥落は防げた事だ、違うかな?」
「否定はしません、その可能性は有ったと思います」
俺が肯定すると国務尚書が頷いた。
「あの一件、グリューネワルト伯爵夫人に罪はない、責められるべきはベーネミュンデ侯爵夫人であろう」
「……」
俺にはあの馬鹿女を放置した皇帝と刺激したあんたも責められるべきだと思えるけどね。
「しかしベーネミュンデ侯爵夫人が死んだ今、責められるべき者はおらん。だがイゼルローン要塞が失われた事で皆が不安を募らせている。誰かを悪者にして責めたい、その事で不安を紛らわせようとしているのだ」
「なるほど、生贄を欲しているという事ですか?」
「うむ」
沈痛な表情をしている、まあ真実かもしれん
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