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至誠一貫
第一部
第四章 〜魏郡太守篇〜
四十七 〜愛刀〜
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様……。そのような悲しい事を仰らないで下さい。お父様は平和な世にも立派に生きられます。いいえ、生きて下さい」
 真剣な眼差しの月。
「心配致すな。むざむざとお前達を遺して逝くつもりはない」
「きっと、ですよ?約束しましたからね?」
「……わかった」
 ふっ、これでは、やすやすと斃れる訳にはいかぬな。

 商家が立ち並ぶ一角。
 その中に、行列が続く店があった。
「お父様、これは何の行列でしょうか?」
「ふむ。見た方が早かろう」
 月の手を引いて、店の入口へ。
「お客様、困ります。皆さんお並びでして」
 若い奉公人が私を呼び止めようとする。
 と、横から初老の男が慌ててそれを止めた。
「これ、この御方はよいのだ。それより旦那様をお呼びしなさい」
「は、はいっ!」
 若者は、慌ただしく店に駆け込んでいく。
「申し訳ありません、太守様」
「気にせずとも良い。主人は息災か?」
「はい、それはもう」
 番頭らしき男は、愛想笑いを浮かべる。
「おや、此方は?」
「我が娘だ」
「これはこれは。いつも、お父上には御世話になっております」
「は、はぁ……」
 月が反応に困っていると、主人がやって来た。
「ご無沙汰しておりましたな、土方様。……そして、董卓様」
「あなたは……」
「はい」
 店の主人、張世平は笑みを浮かべながら、頭を下げた。

 店の奥に通され、茶菓を出される。
「董卓様がお立ち寄りとは存じませんで。ご挨拶にも伺わずに申し訳ございません」
「いえ、私は……」
 月はチラ、と私を見る。
「お前も既に存じているであろうが、月は洛陽に向かう道中でな。此処には立ち寄ったまでだ」
「左様でございますか」
 張世平は頷く。
「石田散薬の方はどうか? 評判は上々と見たが」
「はっはっは、あの通りでございますよ、土方様。蘇双の日本酒と合わせ、効果は抜群と評判でして」
 我が生家の秘伝薬、それが世の為人の為になっているのであれば、何も言う事はない。
「つきましては土方様。御礼を差し上げたいと存じますが」
「礼だと? だが、お前からは以前に」
「はい、確かに資金や糧秣をご用立てしました。ですが、それは同時に、あなた様への投資でもあった訳です」
「投資か」
「そうです。我々商人は、物を売り買いするばかりでは、稼ぎは大きくなりません。そこで、投資をする訳です」
「……だが、お前が稼いだのは、私の武功によるものではあるまい?」
「直接的にはそうでしょうな。ですが、石田散薬は、効き目がいくら優れていても、土方様のお名前がなければ、此処まで売れる事はなかった事も事実ですな」
「…………」
「ですが、土方様は私の見込んだ通り、大陸中に噂されるまでのご活躍をなされました。無位無冠だったあなた様が、
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