崑崙の章
第21話 「ほらよ……涙拭けって」
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けの方が、自身の言を違えたのだ。
きっと余程のことがあったに違いない。
だから、私や鈴々がご主人様を探しに行くと桃香様におっしゃったのだが……
『ご主人様はきっと帰ってくるよ。だから私達は信じて待っていようよ』
そうおっしゃった桃香様。
きっと、内心では誰よりも……ご主人様を探しに行きたいであろうに。
朱里も雛里も、そして馬仁義殿も。
『私達の使命は、盾二様が戻られるまで、桃香様を補佐して梁州を発展させることです』
『盾二様は絶対に自ら帰ってきます。それまでに私達は命ぜられた事を果たすのが役目です』
『我が主が戻らずとも、指示された使命は山ほど残っています。これを果たすまでは動けませぬ』
ともすれば非情のように聞こえるそれぞれの言。
だが、それらはご主人様を本当に信じているからこその言葉だ。
なにより、そのご主人様が彼らに数ヶ月かけて伝えた使命は、まだ半分も果たされてはいないらしい。
(私や鈴々に出された指示以上に、あの三人には様々に託されたということか……)
それは、私達とあの三人との立場の違いであるとわかっているとはいえ。
少しだけ……妬ましく思ってしまう。
三人はご主人様の『臣』。
私と鈴々は、桃香様の『臣』
その立場の違いが……もどかしい。
……ん!?
(……なんだろう。このもやもやは。私はなにか、不安があるのだろうか?)
心に生まれたしこりのようなもの。
なにかが……何かが引っかかる。
(桃香様と……ご主人様。二人の……)
何かが……何かが、私の中で思い至る直前。
「関雲長様!」
あっ……
不意にかけられた言葉に、それが霧散してしまう。
私は掴みかけた何かを惜しむように、声をかけてきたものを睨みつけた。
「か……あ、あの。え?」
相手は、警官の一人だった。
その彼は、私の恨みがましい視線を受け、慌てた様子で戸惑っている。
(はっ、わ、私はなにを……)
「ごほん……すまん。何か用か?」
「あ、いえ。こ、こちらこそすいません。じ、実は、市場の商人たちから未許可の商人が店を開いていたそうで。その引き渡しをお願いできないかと」
「? それはいいが、お主は?」
「実は、もう一件未許可の商人がおりまして。そちらの受け取りに行かねばならぬのです。こちらの方は、暴力沙汰にもなったそうですので、実況見分も行わなければならず……」
暴力沙汰か。
であれば、そちらのほうが緊急性が高いか。
……しかたない。
「ああ、なるほど。わかった。その商人を交番に連れて行き、事情徴収しておけばよいか?」
「はい、そうしていただければ助かります。よろしく
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