崑崙の章
第21話 「ほらよ……涙拭けって」
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も威嚇する必要はない。
むしろ頼れる隣人としての立ち位置が望ましいのだ。
古き良き時代の……日本の田舎町の駐在所、その警官が理想だった。
まあ、元いた世界の……各国の警察のように、年月を経て巨大化した組織ではそれも無理だが、小さな街で最初から立ち上げるならばそれもできるはず。
そう思って人選に気を配るように書いておいたのが幸いだったようだ。
(あとは実際の有事での対応力が問題だが……それを知るために、自分で揉め事を起こすなんて本末転倒だしな)
それは桃香たちと合流してからでも見られること。
無理に揉め事を起こす必要はない。
とりあえずは、街の中に入れたし……
(まずは市場に行くか)
そう思って、はたと立ち止まる。
「……市場ってどっち?」
結果的に、人に聞きつつ市場まで辿り着いた。
(街の内外共に、案内板の設置は必須だな……あとで朱里たちに指示しなきゃ)
こういう民の視点になって考える機会がないと、本当に必要な物というのは気づきにくい。
外は、街道整備の一環で簡単な立て札でもいいのだ。
そして門に入ってすぐ、街の主要な場所を記した案内板があれば、衛兵……いや、警官の道案内などもしやすくなるだろう。
(さて、市場はどうかな……?)
眼前の市場は、巴郡に勝るとも劣らぬ活気に満ちている。
「さあさあ! とれたばかりの大麦だ! 米と混ぜて麦飯にしてもよし! 煎ってお茶のように飲めば、暑い残暑も乗りきれるぜ! さあ、買ったかった!」
「こういう暑い時こそ、カレーだ、カレー! 巴郡から取り寄せた香辛料だよ!」
「じゃがいも、じゃがいも! 豊作だったからまだ残っているよ! 次に取れるのは冬になるぜ! 買うなら今のうちだ!」
ほほう……この夏の時期じゃ、どんなものが流通しているのかと思ったけど。
じゃがいもの育成は成功したようだし、夏穀である大麦の栽培もできているようだ。
陸稲の廃止による輪栽式農業の取り入れは、なんとかうまくいったようだ。
俺がいなくても、朱里と雛里がいれば十分に政策が回るようだな……いいことだ。
あとは一刀さえ……
「兄ちゃん、兄ちゃん! そこの兄ちゃんよ!」
!?
と……いかん。
道端でぼーっとしていたらまずいか。
声をかけてきたのは、近くの屋台のおっちゃんだった。
店の前で邪魔だって言われるかな……?
「どうやらあんた、悩んでいるね?」
「……は?」
「わかってる! なにもいうねい! あんたの悩み……当ててやろう!」
……俺、何も言ってないんだが。
なんだ、このおっちゃん。
まさか、こいつ巴郡の……
「ずばり! 意中の彼女の
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