崑崙の章
第21話 「ほらよ……涙拭けって」
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蔵保存なんてのがないんだから生乳……とくにこんな暑い日じゃ、これ以上日が昇るとマズイだろう。
「じゃ、お言葉に甘えるよ」
* * * * *
「ほれ、ついたぞ」
「あんがとな、おっちゃん」
「本当は市場か仕事の斡旋所まで連れて行ってやりたいのじゃが……」
「いいって。おっちゃんも仕事だろ。乳が全部売れて儲かるのを祈っているよ」
「ありがとよ! またな!」
そう言って、漢中の入り口にある関所に入っていく。
門にいる数人の警備兵……いや、警官に割符を見せて確認しているようだ。
ふむ……警戒も厳重にしているし、警官の動きもキビキビしている。
指導が行き渡っている証拠だな。
「次!」
おっと、俺の番か。
「お前は……旅人か? 職を求めてここへ?」
警官はじっと俺を見定めつつも、表面上は穏やかに聞く。
ふむ……さてどうしよう。
ここで俺の素性を言ってもいいんだが……大騒ぎになりそうだなぁ。
それに、今は生の漢中の状態を見たいし……よし。
「いえ、知人に会いに。最近こちらにきたようなので、その人を頼ろうかと思っています。ついでに噂にきく漢中の街が見たくて」
「ふむ……この街は改革が進められておるため、その人物がここにいるとは限らんぞ? 周辺の農邑に移住したかもしれん」
おっと……そうくるか。
さて、どう対応するかな。
「その人物はどのへんに住んでいるのか聞いておるのか?」
「いえ……残念ながら。ただ、いないようならば他の邑も探すつもりですが」
「ふむ……では、街の中にある交番を尋ねるといい。ここは地区ごとに人頭帳があるゆえ、探している人物が見つかるかもしれん」
ほう……もうそこまで門戸調査が徹底されているのか。
朱里と雛里、随分頑張ったんだな……
「漢中内に交番は、三十箇所ある。探すのは大変かもしれんが、うまくみつかるといいな」
「はい……ありがとうございます」
「ただし、揉め事は起こさないようにな。困った事があれば交番にいつでもきなさい。仕事の斡旋もしてくれるだろう。がんばれよ」
そう言って、にこやかに笑った。
……いい人、だな。
警官の人選には、常に相手の立場になって考えるような人物を優先的に選ぶように指示しておいた。
変に威嚇するような人物は、どんなに善行を為しても他人に受けいれてもらえないことがある。
まあ兵なんぞ所詮は暴力組織なのだし、そういう人物には兵として威嚇する立場のままがいいだろう。
だが、俺の目指した警官は、もっと身近な防衛組織を目標としている。
民の立場になって接することが第一なのだ。
舐められてはいけないが、だからといっていつ
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