崑崙の章
第21話 「ほらよ……涙拭けって」
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お願いいたします」
そう言って、頭を下げる警官。
そのまま振り返ると、すぐに人の間を縫うように走っていった。
(やはり随分忙しいようだ……)
警官制度は、現状のところうまく機能している。
だが、少々人員的に無理が生じてきているのかもしれない。
(何しろ漢中は、ここ一年で爆発的に発展してきたゆえな)
人口はかつての二倍に届こうとしている。
突貫工事で作られた住居も、ほぼ埋まっているような状況だ。
これ以上の住人を済ますには、外壁の拡張を行って新しく土地を確保しなくてはならない。
(だが、その予算がな……)
じゃがいもと輪栽式農業の導入により、食料の不安がなくなったとはいえ、即税収に結びつくわけではない。
先行投資として義勇軍時代の資金と、宛の商人から借り受けた資金の全てを投入した政策は、まだ一年目。
その投資分の回収すらまだ出来てはいないのだ。
漢中の拡張ともなれば、最低でも二十億銭はいるだろう。
漢中の年間予算にもなる資金のあては、現状では何処にもない。
(来年以降はさらに新規事業も控えている。問題が山積みだが……)
私は歩きながら頭を捻る。
朱里も雛里も頭を悩ませているが、現状では場当たり的な政策で行うしかないという。
(せめてもう少し税が取れれば……いや、それでは元の木阿弥か。あくまで公平に、そして誰もが笑い合えるため……)
痛し痒し、といった状況であることは百も承知。
だが、それでも理想を追いかけなければ……
私達が、桃香様が目指したモノは、実現できないのだ。
「……ん?」
溜息をついた拍子に、視界に入る人だかり。
そこには周囲の商人に囲まれた一人の男がうなだれている。
どうやら報告にあった未登録で店を出していた者らしい。
「いかんいかん……仕事が優先だ」
私がつぶやき、息を吸う。
「我は関雲長である。警官より移送を頼まれてきた。未登録の商人は誰ぞ?」
「あ、関雲長様!」
「関将軍だ!」
周囲の商人が声を上げる。
その声に、囲まれていた男は、ビクッと身を震わせた。
「雲長様、この男がそうです。不正に値を釣り上げた青金石を販売していました」
「ふむ……」
青金石か。
最近流通しはじめた希少な石。
深い青の波のような模様が特徴らしい。
「で、この街に初めてきた客を狙って、相場の倍以上で売ろうとしていました。値札もなく、市場税も未納のようです」
「俺は、そんなこと知らな……」
だが、そんな男の科白を、手に持つ青龍偃月刀を突きつけることで遮る。
「そうか……市場で商売をすることは、門のところで聞かれたはず。商売すると言
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