21部分:第二十一章
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第二十一章
「わかったかしら」
「これもまたいつものことですよね」
速水は答えた。
「残念ですが」
「そういうことよ。それじゃあ」
沙耶香は雪の街の中で言う。白く小さい雪がしんしんと降り注いでいた。それが速水の白いコートと沙耶香の黒いコートの上にかかる。しかし雪はかかる側から結晶となり消え去るのであった。まるでそれそのものが儚い命であるかのように。
「警察ね。警部はお待ちかしら」
「生真面目な方ですからね」
沙耶香に応えて述べる。
「おそらくはもう」
「御苦労様ね。こんなに寒い朝だというのに」
「おや、御嫌いですか」
沙耶香の今の言葉に顔を向ける。
「この雰囲気が」
「いえ、むしろ好きよ」
冷たく凍った空気を感じながら速水に応える。
「この感じ。何か感じているだけで」
「そうですね。実に心地良いものです」
速水もそれに頷く。そうして足を進める。
「この冷たさが」
「そこに彼もいるのね」
あの魔人のことである。彼のことは忘れてはいない。
「それとも。あちらに帰っているのかしら」
「さて。それは本人にしかわかりませんが」
「どちらにしろ。すぐにまた会えるわね」
「はい」
その言葉にこくりと頷く。
「それは間違いなく」
「飽きっぽい性格なのが残念だわ」
それに少し言葉と心を向ける。
「けれど。次はね」
「こちらも最後まで楽しむとしましょう」
「ええ。それではその前に」
目の前に現われた北海道警本部を前にして呟く。
「お話をね。しておかないと」
「ええ」
二人はそのままビルの中に入る。そうしてあの会議室に向かった。すると予想通り警部はもう服装を整えて部屋の中にいるのであった。
「おや、早いですね」
「いえ、貴方も」
速水が彼に応えた。
「もうおられたのですか」
「まあ雪でしたので早めに家を出まして」
警部はお茶を啜りながら笑って言ってきた。緑の茶から白い湯気が出ていた。
「今来たばかりですが」
「そうですか」
「それでですね」
お茶を自分の席の上に置いて二人に顔を向けてきた。そのうえでまた言う。
「昨夜は何かあったでしょうか」
「はい、それもとびきりの出来事が」
沙耶香がにこりと笑ってその言葉に答える。
「ありましたよ」
「というとやはり」
「はい」
今度は速水が述べてきた。
「あの方に御会いしました」
「そうですか。場所は何処でしょうか」
「オーロラタウンです」
「ああ、あそこですか」
警部はその地名を聞いただけで何処かすぐにわかって納得したように頷く。
「あそこに出ましたか、今度は」
「今度は何もなかったみたいね」
沙耶香が言ってきた。
「犠牲者は。出ていない筈よ」
「はい、今のところ話は聞いて
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