第二部 文化祭
第29話 あの瞬間から
[2/2]
[8]前話 [9]前 最初 [1]後書き [2]次話
いて話す明日奈の瞳は、明日奈の想いを痛いほど映していたから。歌詞を考えるにあたって、その想いについては知っている。知っているはずだった。
──どうしてこんなに胸が苦しいのか。
友人の恋だ。応援してあげるべきなはず。なのに、まりあの心は、それを拒否しているようで。
「わたしきっと……ううん、絶対。キリト君に恋してるんだと思う」
明日奈が微笑んだ。
***
恋。
今までは考えたことすらなかった。
初めて出会った時、和人はまりあの唄声を褒めてくれた。初めて、プーカの少女?マリア?ではなく、?桜まりあ?としての自分を褒めてくれた。綺麗な声だと言ってくれた。
嬉しかった。そんなこと、一度だって言われたことがなかったから。
「あ……」
小さく声を上げる。突然雨が降ってきたのだ。
グラウンドのベンチに座っているまりあの躰を、雨粒が容赦なく叩く。
──もしかしたら、初めて会った瞬間から、あの黒髪の少年に心を奪われていたのかもしれない。
でも。だとしても。友人であるアスナの恋を邪魔するなど、まりあにはとてもできない。──いや、そもそもまりあなど邪魔にすらならないのだろうか。
どの道この不思議な気持ちは、消え去るまでしまっておくべきなのだろう。
「……制服、びしょびしょになっちゃう」
まりあは1人呟くと、グラウンドを後にした。
[8]前話 [9]前 最初 [1]後書き [2]次話
※小説と話の評価する場合はログインしてください。
[5]違反報告を行う
[6]しおりを挿む
[7]小説案内ページ
[0]目次に戻る
TOPに戻る
暁 〜小説投稿サイト〜
利用規約/プライバシーポリシー
利用マニュアル/ヘルプ/ガイドライン
お問い合わせ
2024 肥前のポチ