第三章
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「それで思想教育受けさせられるぞ」
「そうなるか」
「下放させられても知らないぜ」
冗談で文革の頃のことも話す。
「そうなったらどうするんだよ」
「そこから這い上がって国家主席になるさ」
王は笑ったまま李にまた返した。
「今の人みたいにな」
「ああ、今の人な」
「前の人もその前の人もそうだったけれどな」
「もっと言えばその頃の実力者もな」
かつて中国に君臨した最高実力者の話もした、結局生涯に渡って国家元首になることはなかったが毛沢東以後実質的に中国を治めてきた人物だ。
「文革じゃ苦労したからな」
「俺もそうなろうか?」
「でかい夢だな」
「夢はでっかくだよ、だからな」
「じゃあ歌うか?軍歌な」
「いや、こっちにしようか」
共産党の歌は冗談だった、それでだった。
彼は中国で今人気の男性アイドルの曲を選んだ、それを王に示した。
「この曲な」
「それにするか」
「ああ、これならいいだろ」
「そうだな、じゃあな」
「歌うか、今から」
こうして二人はカラオケでも歌いだした、それで暫く時間を過ごした。
時間になって店を出た時もまだ日は高かった、王は自分の腕時計、この前安売りしていた自分の国のものを見て言った。
「まだ五時だぜ」
「俺の時計じゃ六時だぜ」
李も自分の時計を見て言う。
「そっちの時計がおかしいんじゃないのか?」
「いや、おかしいのはそっちの時計だろ」
「御前の時計何処の製品だよ」
「決まってるだろ、誇り高き我が国のものだよ」
王は皮肉を込めて李に返した。
「中国のものだよ」
「そりゃ駄目だろ」
「壊れてるっていうんだな」
「そうだよ、壊れてるだろ」
こう王に言うのだ。
「それはな」
「そうか?」
「俺の時計はな、ちょっと違うぜ」
「何処のだよ」
「台湾省のだよ」
そこから来たものだというのだ。
「中古を買ったんだよ」
「へえ、また贅沢な買い物したな」
「中古だぜ、中古」
「中古でもだよ、贅沢だな」
「自慢の品だよ、だからな」
そうした時計だからだというのだ。
「我等が本土で作ったものよりいいぜ」
「どうだか、じゃあどっちが正しいか調べてみるか」
「ああ、そうだな」
こう話してそしてだった。
二人は傍にあった店の中を覗いてそこの時計をチェックした、その結果李は憮然として王に対して言った。
「俺の方かよ」
「そっちか、壊れてたのは」
「ああ、そうだったよ」
こう王に返す。
「ちぇっ、この前買ったばかりなのにな」
「時計も壊れるからな」
「台湾省のものは壊れにくいんじゃなかったのかよ」
「実際は本土で作ったのかもな」
「かもな、しかしな」
「買ったばかりだってのにか」
「それで壊れるなんてな」
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