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占術師速水丈太郎 白衣の悪魔
16部分:第十六章
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カード達に対して言う。
「それぞれ」
「!?それぞれって」
 若者は速水の今の言葉に顔を向ける。そのうえで問う。
「どういうことなのかな」
「どういうことも何もありません。舞うだけです」
 若者に答える。答えたその直後にカード達が動きを変えた。めいめい様々に舞いながら若者に対して襲い掛かるのであった。
「あれ、何か生きているみたいだね」
「少なくとも普通には動かないのですよ」
 また青年に答える。
「このカード達は」
「ふうん。そうなんだ」
 自分の周りを舞うカード達を見て他人事のように言葉を出してきた。
「思ったより面白いみたいだね」
「思ったよりどころではありませんよ」
 笑って彼にまた言う。
「ほら」
「あっ、来た」
 カードのうちの一枚が彼の顔の前に来た。そうして襲い掛かる。
「それだけではありませんよ」
 速水はさらにカードを投げる。今度は一直線に飛ぶ。
「さあ、これならどうします?」
「凝ってるね。演出いいじゃない」
「どう致しまして」
 右の目元と口元をにこやかにさせて答える。
「後は魔界で。お楽しみ下さい」
「悪いけれど僕は誰にも命令される立場じゃないんだ」
 若者は速水のその言葉は無邪気な笑みと共に否定してきた。
「だから。今も」
「むっ!?」
 速水は若者の動きに目を瞠った。彼は迫り来るカード達に対して腕を振るった。そうして素手でカード達をはたき落とすのであった。
「素手で、ですか」
「面白いけれど脆いね」
 それが彼の感想だった。
「これ位じゃ何ともないよ、期待外れかな」
「期待外れですか」
 その言葉には苦笑いになった。
「それはいささか残念です」
「けれど。いつもの遊びよりは面白いよ」
 無邪気な笑みのままこう述べてきた。
「だから。今度は僕の番だよ」
「来るわよ」
 沙耶香が速水に囁く。
「いいわね」
「ええ、勿論です」
 速水もまた沙耶香のその言葉に頷く。二人は若者の身体から妖気がさらに増しているのが見えていた。それは暗闇の中を支配せんばかりになっていた。


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