第一章
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北京ラプソディー
年寄りはこう言う。
「あの頃は全く違ったよ」
「そうそう、国が出来た頃は」
「大躍進の頃とはね」
「文革の頃なんてもうなあ」
「天安門は知ってるよな」
八十を越えた彼等は口々に言う、中国の昔のことを。
しかしその天安門から後に生まれた彼等にそうしたことはわからない、それでだった。
若者達は老人達の話にこう言うのだった。
「まあな、文革が滅茶苦茶だってことは聞いてるよ」
「教科書にはあまり載ってないけれどな」
「俺達だって共産党は嫌いだしな」
「おおっぴらには言えないけれどな」
その共産党もかつてはより酷かったという、老人達が言うには。
「今は全然違うのも当たり前だろ」
「自転車ばかりの時代でもないんだよ」
自動車も増えた、それもかなり。
「しかも人民服もないしな」
「今人民服着てる人殆どいないだろ」
本当に減った、これも文革の頃とは違う。
「農村でもテレビがあって扇風機もあるんだぜ」
「ニーハオトイレもなくなったしな」
あの扉のないトイレだ、これもなくなっている。
「もう今時な、昔の北京とどうかって言われてもな」
「今は違うんだよ」
「今の中国と昔の中国は全く違うさ」
「北京にしてもな」
実際にその通りだった、北京は天安門の頃と比べても全く違う。
若者達はそれぞれの持っている金に合わせて流行を追い赤本なぞ誰も手にしない、見ればマクドナルドに入っている者達もいる。
そのマクドナルドでだ、今二人の青年が話をしていた。
李青輝と王登陽だ、李は茶髪にして首に十字架の様なアクセサリーを付けている、細面で目の細い青年だ。
王は黒髪を伸ばしている、やや四角い顔をしていて眉が太い。彼は黒い服である。
その二人がだ、ハンバーガーを食べながら話をしていた。
「なあ、最近な」
「最近?何だよ」
李は王の言葉に応えた。
「何があったんだよ」
「いや、御前恋愛してるか?」
「恋愛かよ」
李はフライドポテトをかじりながら王の言葉に反応した、飲み物はコーラだ。
「それか」
「ああ、そっちどうなんだよ」
「全然だよ」
これが李の返答だった。
「この一年な」
「誰も好きになってないか」
「アイドルは違うけれどな」
そっちの追っかけはしているというのだ。
「あと二次な」
「アニメかよ」
「そっちはいるぜ、日本のな」
「日本のアニメなあ」
「別に嫌いじゃないだろ」
「ああ、愛国とか騒ぐ馬鹿じゃないからな俺は」
李はそうした連中には軽蔑を見せて王に返した。
「そう言って暴れても何にもならないからな」
「そうだよな、ああした連中もな」
「馬鹿だろ、あれは」
「そう思うぜ、俺もな」
王もこう李に答える
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