15部分:第十五章
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ながら。
「それではお相手しましょう」
「二人だけれど。いいかしら」
沙耶香も言ってきた。
「それで」
「うん、いいよ」
若者は笑顔で頷く。その笑みは果たして余裕なのかそれとも単にわかっていないだけなのかは二人にもわからない。しかしその身体から発せられる妖気が二人に向けられてきているのはよくわかった。
「じゃあ来て。遊ぼうよ」
「はい」
速水はその言葉にまた頷く。
「それでは」
「仕掛けるわよ」
速水はその右手にカードを出してきた。沙耶香は鞭を出す。それは白い得体の知れない鞭であった。
「いいわね」
「凄いね、素手じゃないんだ」
「私達の流儀です」
「これは許してもらえるかしら」
「うん、いいよ」
彼は笑ってまた言う。
「スリルがないと楽しくないから。けれど僕は素手でいるから」
「それでいいのですね」
「僕はこれでいくのが好きなんだ」
自分の両手を緩く開いてその中を見ながら言う。
「自分の手でね。だからいいよ」
「そう。だったら容赦はしないわよ」
沙耶香は鞭を振ってきた。それで若者を襲う。
「白い鞭。これは何かな」
「大したものじゃないわ」
沙耶香はそう答える。鞭はまるでそれ自体が命があるかのようにしなやかで素早い動きを見せて彼に襲い掛かる。
「ただ。命を吸い取るだけ」
「命を?」
「そうよ。生命力を吸い取る鞭なの。命を持たない相手ならば焼き尽くす」
そう説明する。この鞭は特別な鞭だと言っていた。沙耶香の魔力による鞭なのだ。
「さあ、よけられて?」
鞭を振るいながら若者に問う。
「この鞭を」
「面白いね」
若者は自らに襲い掛かるその鞭を見ても楽しそうに笑っていた。しかし何ら構えるところなく悠然とそこに立っているだけであった。まるで気にもしていないかのように。
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