15部分:第十五章
[1/2]
[8]前話 [1]次 最後 [2]次話
第十五章
「それが貴方達だったんだ」
「そういうことでしょうね。それでは」
今度は速水が言葉をかけてきた。
「はじめて御会いしましたが」
「そうだね」
若者は楽しそうに笑って速水に答える。
「けれど。僕を探していなかった?」
「はい」
速水はその言葉にこくりと頷いた。
「貴方に御聞きしたいことがありまして」
「僕にだね」
「そうです。貴方は今まで何をしていたのでしょうか」
右目で若者を見据えて問う。その服は決して卑しいものではなくまるでロココ期の貴族のそれのようである。そうした一見して気品のある若者だがそこに漂っているのは不気味な妖気であった。それを隠そうともしていないのがわかる。
「それを御聞きしたいと思いまして」
「何だ、そんなことだったんだ」
若者はそれを聞いて楽しそうに笑ってきた。
「僕は遊んでいただけだよ」
「遊んでいた」
「そうだよ。楽しくね」
無邪気な笑顔で述べる。邪気はないがそれと同時に底知れぬ邪悪さもある笑みだった。
「楽しんでいたんだ。引き裂いて」
「引き裂く」
「そして千切って。えぐり出して食べて」
言葉に血が宿っていく。その言葉が何よりも雄弁に物語っていた。
「楽しく遊んでいたんだ」
「そうですか」
「そうだよ。そしてこれからもね」
笑いながらまた言う。
「楽しく遊ぶだけなんだ」
「そうですか」
速水は一先は静かにその言葉を聞いていた。それは沙耶香も同じであった。
「楽しくね。今日だってそうだよ」
「今日も」
「どういうことかしら」
「今言った言葉通りだよ」
若者はまた言ってきた。
「いつも気が向いたらこっちの世界に出て来て楽しく遊ぶんだ。ただそれだけだよ」
「こっちの世界ね」
「どうやら貴方は」
「ほら、こっちの世界の人ってすぐ壊れちゃうじゃない」
詰まらなそうに言ってきた。
「ちょっと遊んだだけでボロボロになっちゃうんだよ。あっちの世界だとあまり壊れないのに」
「そうですか」
速水はそれを聞いて一人呟く。
「貴方は。やはりこちらの世界の人間ではありませんか」
「僕は人間だよ」
しかし彼はそう反論する。
「それは言ってるじゃない。住んでいる世界が違うだけだって」
「わかりました。貴方のことは」
速水はそこまで聞いて納得したように頷いてきた。
「貴方は。この世界に来てはならない方です」
「そういうことね」
沙耶香もその言葉に頷いてきた。
「私も同じ意見よ。といっても貴方は遊びたいのでしょうね」
「うん」
若者は屈託のない少年の笑みで応えてきた。
「じゃあ遊んでくれる?今日も楽しくなりたいんだ」
「わかりました」
速水は彼の言葉にこくりと頷いてみせてきた。右目に強い決意の光を込め
[8]前話 [1]次 最後 [2]次話
※小説と話の評価する場合はログインしてください。
[5]違反報告を行う
[6]しおりを挿む
[7]小説案内ページ
[0]目次に戻る
TOPに戻る
暁 〜小説投稿サイト〜
利用規約/プライバシーポリシー
利用マニュアル/ヘルプ/ガイドライン
お問い合わせ
2024 肥前のポチ