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必死なのだ
第七章
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「早く出てくれよ」
「一体どうしたんだよ」
「他の飛行機が出ているんだ」
 赤穂が焦る彼等に話す。
「だから今は待つんだ」
「ううん、待つしかないんですか」
「とりあえずは」
「そうだ、今は待つしかない」
 実際にそうだった、皆焦る気持ちをそのままに何とか待った、その時は永遠の時の様だった。
 その間もニュースでは。
「攻め込んで来たそうです!」
「本当かよ!」
「早く、早く出てくれ!」
「さもないと逃げられないぞ!」 
 パニック状態になろうとしていた程だった、しかしだった。
 夜になってやっと離陸出来た、そして日本に戻って。
 赤穂は家で瓶のビールを妻にコップに入れてもらいながらこう言った。
「まさか誤報だったなんてな」
「まだ戦争になってないわね」
「ああ、そうだな」
 ビールを受けながらテレビを観る、だがそのニュースでは。
 宣戦布告だの侵攻だのは誤報だった、そうしたことは一切なかった。
 緊張状態はまだ続いている、だが戦争にはなっていなかった。
「現場は酷かったよ」
「本当に混乱状態だったのね」
「ああ、本当にな」
 彼はしみじみとした口調で語る。
「空港で宣戦布告の話を聞いてな」
「パニック状態だったのね」
「皆大騒ぎだったよ、俺も黙っていたけれどな」
 それでもだというのだ。
「内心不安で仕方なかったよ」
「そうだったのね」
「生きて帰られてよかったよ」
 ほっとした顔での言葉だった。
「全くな」
「それでだけれど」
「ああ、何とか皆帰らせることには成功したからな」
 それでだというのだ。
「課長にはなれそうだな」
「よかったわね」
「出世はな、けれどな」
「けれど?」
「もうこんなことはしたくないな」
 十年は老けた様な顔での言葉だった。
「二度とな」
「疲れたから?」
「本当にな、寿命が縮まったからな」
 疲れたどころではなかった、そうだったというのだ。
「もう二度と御免だよ」
「そうなのね」
「ただ、皆逃げられて」
 そしてだった、つまみの冷奴に醤油をかけながら話す。
「それで戦争にもなってなくてな」
「よかったのね」
「このまま戦争して欲しくないな」
「そうよね、それだけはね」
 妻もほっとした顔で夫にビールを入れていく、だが今度は。
 総務課長になった赤穂はまた人事部長に呼ばれこう言われていた。
「今度はヨハネスブルグですか」
「もういい加減危な過ぎるから撤退することにしたんだよ」
 何処の世紀末救世主の世界かと言われる様な町だ、実はアパルトヘイトの頃から進出していたがそれがもうだというのだ。
「酷過ぎるからね」
「それで、ですよね」
「撤収の助っ人に行って欲しいんだが」
「あの、ヨハネスブルグjは」
 
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