14部分:第十四章
[1/2]
[8]前話 [1]次 最後 [2]次話
第十四章
「やはりこれですか」
速水はカードの中で誘うように笑う悪魔を見て呟く。沙耶香もそれを見ている。
「わかってはいても」
「やはり魔人なのね」
沙耶香もそれを見て納得した顔になっていた。
「あの殺し方は。人ではないとは思ったけれど」
「その魔人の居場所ですが」
「別に探す必要はないわ」
沙耶香は静かな声で述べてきた。
「別にね」
「ないですか」
「ええ。あちらから近付いて来るでしょうね」
そのブラックルビーの目を静かに輝かせて言う。黒い光が黄昏ていく雪の街の中に映える。まるでその光で暗くなろうとする街の全てを見るように。
「魔性は魔性を呼ぶものだから」
「魔性をですか」
「そうではなくて?」
速水に問い返す。
「魔性というものは。お互いを呼び合うもの」
「それは貴女が呼び寄せるということですか?」
「私だけとは限らないわよ」
しかし妖しい笑みをまた浮かべる。
「貴方もまた」
「おや、私もですか」
速水はその言葉を聞いてその右目を細めさせてきた。まんざらでもないといったふうである。
「これは意外ですね」
「そうは見えないけれど」
また笑って返す。楽しそうに。
「貴方も私も。この世にいてこの世とはまた違った世界にいる者だから」
「ふふふ」
その言葉に答えずに笑みを返す。
「そうした存在は同じ存在を呼ぶ。魔性の存在を」
「我々はお互いを呼び合う」
「違うかしら。実際に感じていると思うけれど」
「確かに」
漆黒の髪に隠れて見えない左目が光った。黄金色の光が漆黒の絹の奥から見える。それは沙耶香のブラックルビーの光と同じ妖しい輝きであった。
「この目が教えてくれています」
その左目の前に自分の左手をかざして言う。
「近付いているようです」
「そうね。来ているわ」
「さて、一体何が出て来るか」
速水は面白そうに笑って呟いた。
「楽しみではあります」
「楽しみなのね」
「出会いは誰とであれ楽しいものではないですか」
沙耶香に対して述べた。声もまた笑みを含ませていた。
「違いますか?」
「そうね。できれば今は可愛らしい女の子がいいのだけれど」
「おや、そちらですか」
その言葉を聞いてまた笑う。
「女の子ですか。また」
「肌、いえ唇が求めているのよ」
目を細めて唇に左手人差し指の腹の部分を当てて述べる。
「女の子をね」
「そうですか。ですが今は」
「残念だけれど遊んでいる時間はないみたいね」
「はい。では参りましょう」
また沙耶香に声をかける。
「舞台へ」
「ええ」
二人はそのまま何処かへと姿を消す。そうして夜になると札幌地下街に出た。もう店は全て閉まり誰もいない筈の場所だ。真っ暗闇でシャッターだけが左右にあるコン
[8]前話 [1]次 最後 [2]次話
※小説と話の評価する場合はログインしてください。
[5]違反報告を行う
[6]しおりを挿む
[7]小説案内ページ
[0]目次に戻る
TOPに戻る
暁 〜小説投稿サイト〜
利用規約/プライバシーポリシー
利用マニュアル/ヘルプ/ガイドライン
お問い合わせ
2024 肥前のポチ