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必死なのだ
第一章
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                      必死なのだ
「えっ、あの国ですか!?」
「そうだ、あの国の支社に行ってくれるか」
 江古田人事部長は真剣な面持ちで赤穂忠吉に告げた。
「来年度からな」
「ですがあそこは」
 赤穂は難しい顔で江古田に言う。
「今にもじゃないですか」
「戦争が起こりそうだな」
「分断国家でしかもその片割れがあれじゃないですか」
「独裁国家で無茶苦茶な軍国主義だからな」
 江古田もわかっている感じである。
「国民は皆餓えていて核兵器を開発していてな」
「それで今挑発しまくってるじゃないですか、本当に今にでも」
「だからなんだよ」
 江古田は難しい顔で赤穂に告げた。
「流石に今にでも戦争になりそうだからね、我が社としてもあの国から撤退を決めたんだよ」
「じゃあ何で私があそこに行くんですか?」
 不平と疑問を思いきりぶつける、三十五歳になり皺も出て来たその顔にもそういtったものを出させたうえで。
「火事場に飛び込めっていうんですか」
「殿軍だよ」
「戦争のですか」
「そう、君は業務を収めることに何度か関わってるね」
「ええ、まあ」
 仕事は終わらせるものだ、そして赤穂は仕事を収めることを得意としている。華々しい活躍はしないが収めることは得意なのだ。 
 それでその彼だからだとだ、江古田は言うのだ。
「もう現地の社員は全て解雇してね」
「それで日本人の社員をですか」
「皆仕事を終わらせて家族も財産も全部収めてね」
「そのうえで、ですか」
「全員日本に戻して欲しいんだよ」
「その指揮ですか」
「支社の部長としてそこに入ってね」
 今彼は総務の係長だ、その彼を支社とはいえあえて部長に抜擢して、というのだ。
「社長の大石さんと一緒にね」
「指揮ではなく参謀ですか」
「実際の指揮は大石さんが執るよ」
 支社長である彼がだというのだ。
「君には大石さんのサポートと参謀を頼みたいんだよ」
「役割は重要ですね」
「皆には帰ってもらいたいんだよ、勿論解雇することになる現地の社員の人達もね」
 江古田は彼等のことも忘れていなかった、赤穂に対して難しい顔で話す。
「出来るだけ避難しやすい様にしていてくれるかな」
「わかりました、何か色々と大変ですね」
「支社の位置があの国の首都にあるからね」
 これは仕事のしやすさを考えてのことだ、首都にあればそこが国家の中心なので交通の便もよく情報も人も集まる、それを考えてのことだった。
 しかしその首都の位置がなのだ。
「よりによって国境からすぐだよ」
「よく砲弾が届くって言われていますね」
「実際に届くよ」
 江古田は笑っていなかった。
「宣戦布告と同時に砲撃したらそれだけでね」
「文字通り火の海ですね」
「そうなる前
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