第五章
[1/2]
[8]前話 [1]次 最後
「よかったな」
「ああ、ほっとしてるよ」
「二年で辞めてくれてな」
「もう一年は沢山だったよ」
堀内の辞任を心から喜んでいた。
「あと一年監督だったらな」
「最下位だったかもな」
そうなっていた可能性があったというのだ。
「ひょっとしなくてもな」
「チームは余計にばらばらになってな」
「そうなっていたかもな」
巨人は一度だけ最下位になったことがある、第一期長嶋政権の最初の年だ。その悪夢が再びだったかも知れないというのだ。
「本当にやばかったよ」
「チームの雰囲気は最悪だったしな」
「もう暗いし采配は駄目だしで」
「どうにもならかなかったからな」
「けれどな」
それでもだというのだった。
「それも終わったな」
「原戻って来たぜ」
二年前に惜しまれつつ辞任した彼がだというのだ。
「これで復活出来るな巨人も」
「どんな戦力でも優勝出来そうになかったけれどな」
堀内なら、というのだ。
「けれど原ならな」
「ああ、もう一度優勝狙えるな」
「絶対にな」
彼等は堀内の辞任と原の復帰を心から喜んでいた、だが。
他球団のファン達は残念がってこう話していた。
「辞めてくれなくてよかったのにな」
「十年でも二十年でも監督して欲しかったな」
「そうしたら巨人は暗黒時代だったのにな」
「負け越しどころか最下位爆進でな」
「ずっと最底辺で惨めにあがいていたのにな」
「それがなくなったからな」
「原だと強いぜ」
原の実力もわかっていた、それ故に彼等は嘆いているのだ。
「まあ原は嫌いじゃないけれどな」
「原自体はな、いい奴だしな」
「けれど巨人の監督になったら手強わいからな」
「強敵の復活は嫌だな」
「巨人が勝つからな」
だから原の復帰は残念だった、その人柄は好きでも。
そして何よりもだった、堀内の辞任を残念がるのだった。
「頼むからもう一度巨人の監督やってくれ」
「それもずっとな」
「そして巨人を最下位にしてくれ」
「あんたじゃないと駄目なんだよ」
彼等は堀内を心から応援していた、しかし彼はユニフォームを脱ぐことになった。引き止める声も虚しく。
その堀内を見て年老いた野球ファン達が酒を飲みながらこう話した。
「予想してたんだがな」
「ああ、コーチの頃からな」
その頃からだというのだ。
「名選手だったんだけれどな」
「名コーチじゃなかった」
「名監督じゃなかったな」
むしろその逆と言ってよかった。
「長嶋も変な采配ばかりだったけれどな」
「おかしな補強ばかりしてな」
「けれど堀内はもっと酷かったな」
「名選手であってもな」
かつてはそうであってもだというのだ・
「名監督とは限らないな」
「全くだ、あれだけ罵られて叩かれていた原の方がず
[8]前話 [1]次 最後
※小説と話の評価する場合はログインしてください。
[5]違反報告を行う
[6]
しおりを挿む
[7]小説案内ﾍﾟｰｼﾞ
[0]目次に戻る
TOPに戻る
暁 〜小説投稿ｻｲﾄ〜
利用規約/ﾌﾟﾗｲﾊﾞｼｰﾎﾟﾘｼｰ
利用ﾏﾆｭｱﾙ/ﾍﾙﾌﾟ/ｶﾞｲﾄﾞﾗｲﾝ
お問い合わせ
2024 肥前のﾎﾟﾁ
しおりを解除