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占術師速水丈太郎 白衣の悪魔
10部分:第十章
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り真相は藪の中なのである。
「あきらかに殺人というものを楽しんでいます」
「楽しんでいるどころではないですね」
 警部は今度は忌々しげに述べてきた。
「このやり方は。実はこれを見て参ってしまう者も多くて」
「そうでしょうね、これは」
 速水もそれに同意する。
「我々はまあ平気ですが」
「そうなのですか」
「今までもこうした事件の捜査に協力していましたから」
「それは凄い」
 警部は相変わらず手を拭きながら速水に述べる。どうも彼はそうではないようだ。
「私は無理ですね、流石にここまでは」
「そのわりにはよく耐えておられませんか?」
「痩せ我慢というやつですよ」
 苦笑いで速水に応える。
「これは。飛び込みより酷い」
「電車のですか」
「ええ。それでもこうはなりませんよ」
 死体を見て忌々しげに述べる。周りの警官達の中には吐いている者すらいる。
「あんまりです、これは」
「確かに。殺すのを楽しんでいる感じですね」
「快楽殺人者というものでしょう」
 速水はそう述べる。
「切り裂きジャックと同じで」
「それ、マスコミに言うとネタにされますよ」
 苦い顔で速水に言う。その間に死体は回収されていく。
「ですから御気をつけて」
「はい。何かと厄介ですね、それは」
 話を聞いて言う。
「マスコミの方々はまた。こうした事件には敏感ですから」
「そうね。ジャーナリストはそれが仕事だし」
 沙耶香はその手から黒い花びらを数枚放っていた。そうしてそれで何かを探っているようであった。これも魔術のようであった。
「殺されたのは昨日の真夜中ね」
「それでわかるのですか」
「わかるわ。花びらが教えてくれるの」
 沙耶香は花びらを見ながら答えてきた。答えるその顔はまるで仮面のように死体を見ていた。
「どうなったのかをね。生きながらこうされたのね」
「はい、そうなのです」
 警部は生きながらという言葉に反応を見せてきた。
「生きながらです。犯人はいつも被害者を生きながら引き裂いて食べていくのです」
「獣ですね、まるで」
 速水はそれを聞いて言ってきた。
「それですと」
「獣どころではないでしょうね」
 警部はまた答える。
「この殺し方は。人のものなのは間違いないのですから」
「人の頭脳に獣の心」
 速水はそれを聞いて呟くように述べてきた。
「そうなりますかね」
「力は?」
「人の力というのは恐ろしい潜在力を秘めていまして」
 こう説明してきた。


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