第五章
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それで彼もこう言うしかなかった。
「とりあえず事情がわかり次第また連絡するな」
「ええ、お願いね」
「とりあえずわかっているのは一つだけだな」
「一つだけって?」
「俺が無事だってことだよ」
言われてみればそれだけだった、本当に。
「それだけだな」
「そうね。けれどそれがね」
「一番よかったか」
「本当にね」
私は心底ほっとした、電話が終わるとその場に座り込んでもう動けなくなっていた。それだけの気力もなくなっていた。
彼の帰国は予想通り遅れた、それでやっと帰って来てだった。
私に対して笑顔でこう言ってきた。
「ジプシークイーンと再会できたな」
「もうその呼び名止めてくれるかしら」
私は空港で彼に言った。
「もうね」
「ああ、占いの結果か」
「そう、塔が出たらああなったでしょ」
「あれはないよな。今思い出してもな」
彼も私の言葉を聞いて言う。
「怖いよな」
「だからよ。あのことを思い出すから止めてね」
「わかったよ。それじゃあね」
「別の呼び名でね。占いも止めるから」
それも決めた、またあの塔のカードを引いて同じ事態になるのは嫌だった。
それで彼にこう言ったのだ。
「もうジプシークイーンじゃないから」
「じゃあ普通に呼ぶな」
「そうしてね」
私は彼にこう言ってからその身体を抱き締めた、正直もう占いはしたくなかった。彼が生きていたからいい様なものの。
ただ彼は私と抱き合った後でこう言ったのだった。
「ツインタワーだけれどな」
「完全に崩れ落ちたわよね」
多くの犠牲者を出しながら、それが現実だった。
「今瓦礫の山よね」
「そうなってるよ、ただな」
「ただ?」
「また新しいのを建てるつもりらしいな」
「もあたって」
「そう、あそこの瓦礫を全部撤去してからな」
「またあのビルを建てるの」
私もこれには驚いた、崩れたその後に建てるというのは流石に。
「凄いわね、アメリカ人って」
「確かタロットの塔ってバベルの塔だよな」
「そう言われてるわね」
神に破壊されたから破滅になる、そう言われている。
「あの塔は神に破壊されて終わったけれど」
「あのツインタワーはまた建てるらしいな」
「それは凄いわね」
「アメリカ人って凄いよな。バイタリティがあるよな」」
「本当にな。俺も聞いて驚いたよ」
「私にはそこまで出来ないわ」
それはとてもだった、聞いていて信じられなかった。
「もうタロットしたくなくなったし」
「だよな。まあ今の塔は蘇るみたいだな」
「塔は壊れてもまた建てればいいのね」
「壊れたものでもそうなるからな」
それならだった、俺達も。
「生きているんだ、じゃあこれからもっと親しくなっていくか」
「そうね。最初から生き
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