アンドリュー・フォーク
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るところが、二千万人を犠牲にする羽目になるのだが。
「それで勝てるつもりか。僕のチームは、二学年主席である僕を含めて、四学年主席のシュレイ・ハーメイド先輩だ。人望も厚く、戦略眼もあり、戦術技能も十分過ぎるほどある。そちらの四学年は誰だったか、無口な男だろう?」
「おしゃべりよりはマシだな。雄弁は銀でしかない」
けなそうとして、一息で返される様子に、フォークは奥歯を噛んだ。
それでもただ叫ばないのは、他に考えていることがあるからだろう。
その考えが手に取るようにわかる。
「他は暇があれば艦隊戦のDVDを見るオタク女に、使えない弱虫男か。なかなか素晴らしいチームのようだな、マクワイルド候補生」
そうフォークが馬鹿にしたような笑いを浮かべれば、取り巻きが笑い声をあげる。
しかし、その笑い声は長くは続かなかった。
すっと細くなったアレスの瞳に、フォークの笑いが止まった。
表情をそのままにして、アレスは唇をゆっくりと持ちあげる。
「それは随分と古い情報だな。フォーク候補生――」
「な、何だと」
「時代遅れの情報がそんなに嬉しいのか? まして、相手の欠点を見て安心してどうなる。君は自分の実力に自信がないのか?」
「ふざけるなっ。そんなわけがないだろう!」
「なら、弁舌ではなく行動で見せろ」
アレスが足を踏み出せば、同時にフォークが一歩後ろに下がった。
取り巻きの男にぶつかり、助けを求める視線を送れば、アレスの気配の前に誰も口を挟めないでいた。
動こうとしない様子に、フォークは唇を噛み、睨むようにスーンを見る。
「き、貴様も取り入る人間を考えた方がいいぞ」
「アレスの目がまともに見れないからって、僕に振らないでよ。それより、早く逃げた方がいいと思うよ。いまアレスが恐い顔しているから……」
「貴様ら後悔することになるぞ!」
吐き捨てるようにいって、フォークは踵を返して歩きだした。
走らなかったのは、僅かながらの矜持であるのか。
それでも早足の様子に、取り巻きたちもついていくのが精一杯の様であった。
その姿に、アレスは深くため息を吐いた。
「喧嘩を売るなら、最後まで売れよ」
「本人にとっては、売るつもりはなかったんじゃないかな」
「ああ。自分の思い通りの行動を、相手もとってくれると思っているんだろうな」
なまじ、周囲に持ちあげてもらった反動であるのか。
彼自身は、それが当たり前に思っているようだ。
子供と評価されたのは、あながち間違っていないように思えた。
いや、それが積み重なってアムリッツァに繋がるのか。
「どちらにしても、始末に悪い」
「人気者は困るね」
そう笑いかけたスーンに、アレスは苦笑で答えた。
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