アンドリュー・フォーク
[2/4]
[8]前話 [1]次 [9]前 最後 最初 [2]次話
表情を変えたつもりはない。
ただ、もし彼らに出会う前であればここまで本気になることはなかっただろう。
良い出会いがあったからこそ、負けられないと思う。
そう考えれば、口の端がゆっくりと持ちあがる感触があった。
負けないさ。
そう考えたところで、背後から声が聞こえた。
最初は周囲の雑音に紛れ込み、気づかなかった。
しかし、何度もマクワイルドの名を呟かれれば気づかざるを得ない。
振り返れば、そこにスーンほどの身長をした茶色髪の男がいた。
狡猾な印象を持つ、蛇のような顔つきをした男だ。
酷い表現であるが、こちらを睨むように見上げる表情はそう表現するのが適切に思える。
アンドリュー・フォーク。
アムリッツァの最大の責任者にして、子供の精神力を持ったと噂される人物。
そして、困ったことに自分の同期となる人間であった。
+ + +
「随分と余裕だな、マクワイルド候補生」
取り巻きを数人連れながら、フォークは大げさな動作であざ笑った。
同じ学年主席で、しかも原作では散々な言われようのワイドボーンとフォークであったが、決定的な違いがこれであった。
ワイドボーンは孤高であり、自分のレベルに合わなければ徹底的に他者を切り捨てる。だからこそ、他者を見下すところがあり、人望がないとされている。
逆にフォークは、他者を利用するのが非常に上手だ。
周囲から自分を持ちあげてもらう事によって、現在の地位を確立しているのだ。
同じ学年主席で、馬鹿の代表でもあるが、方向性は逆のベクトルで動いている。
「君などが勝てるわけがないだろう。そうは思わないか?」
「全くだ」
「マクワイルドは身の程を知った方がいいな」
周囲の取り巻きが同調すれば、スーンは呆れたように息を吐いた。
面倒との表現をあからさまに顔に出すが、こちらも同じ気分だった。
「思い込むのは勝手だろう?」
「はん。君の司令官だったか。名前を何といったかな……それよりも、彼が周囲から何と言われているか知っているか、マクワイルド候補生。他者の失敗を喜ぶ、自称天才だよ。何でも過去には千位以内にも入っていない奴にも負けたそうじゃないか」
「よく知ってるな。だが、その千位以内に入っていない先輩は、今回もしっかりと決勝大会に残っているが」
苦笑気味にアレスは答える。
彼が全くの無能と言えないところは、この情報収集力だ。
周囲に持ちあげてもらうため、様々な噂を収集し、あるいはその情報を自分に有利に書き換える。だからこそ、アムリッツァでも政治家の軍事作戦に上手く相乗りをする事ができたのだろうが。
全くの無能であれば、そこに至ることすらできなかっただろう。
もっともこの妙に才能のあ
[8]前話 [1]次 [9]前 最後 最初 [2]次話
※小説と話の評価する場合はログインしてください。
[5]違反報告を行う
[6]しおりを挿む
[7]小説案内ページ
[0]目次に戻る
TOPに戻る
暁 〜小説投稿サイト〜
利用規約/プライバシーポリシー
利用マニュアル/ヘルプ/ガイドライン
お問い合わせ
2024 肥前のポチ