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皇太子殿下はご機嫌ななめ
第13話 「アレクシア・フォン・ブランケンハイム登場」
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られた。
 俺がそう呼ばれたかった。
 くそ〜っ。これで残るは、帝国の白い悪魔ぐらいだな。
 赤い彗星はやだな〜。
 戦慄のブルーでもいいけど。
 クシ○トリアを白く塗りなおそうかな?
 それにしても……。
 まさかという思いがある。
 レーザー水爆弾頭を渡したときに、例のイメージがなかったといえば、嘘になる。
 しかし本当にやるとは、思っていなかった。
 できるとさえ、思っていなかったのだ。
 それをやりやがった。
 たいした野郎だ。二階級特進を申請されているが、それも当然か。
 帰ったら、佐官教育を受けさせねばな。
 そして分艦隊の指揮官たちにも、研修を受けさせるか?
 急造だったからな。受けさせた方がいいだろう。それにしてもさすが、原作組だよな。あっさり艦隊を指揮しやがった。
 あ、なんか俺、泣きそう。
 てやんでい。まけてたまるかよ〜だ。

 ■皇太子本邸 アンネローゼ・フォン・ミューゼル■

 夜になりました。
 まだ皇太子殿下は本邸に戻ってきておりません。
 今のうちに皇太子殿下のお部屋に忍んでいましょう。
 ふふふふふふふふふふふ。

「ミューゼル様。どちらへ向かわれるのですか?」

 背後から声を掛けられてしまいました。
 いや〜んって感じです。
 寵姫がどこに行くって、皇太子殿下のところに、決まっているじゃありませんか。
 振り返った私の前に――女が立っていました。
 私と同じ長い金髪。ですが眼は緑色。
 光度を落とした廊下に、女の姿がくっきりと浮かび上がっています。
 整った顔立ちにすらりとした体型。その肢体を包み込んでいるのは、皇太子殿下の衣装にも似た儀礼服。
 いかにも皇太子殿下付きの女官の一人でした。
 ですが、瞳の奥にめらめらと燃える嫉妬の炎。
 それが皇太子殿下に対して、特別な感情を抱いている事を雄弁に物語っています。
 聞いてない。
 こんな女の事を、私は聞いていなかった。
 目の前が真っ暗になりそうです。

「どこって、皇太子殿下のお部屋です」

 負けません。負けませんからね。

「失礼ながら、ここは後宮ではございません。皇太子殿下の私室でございます。寵姫の方に御用があれば、そちらのお部屋にお渡りになるでしょう。壁一枚。廊下一つですが、後宮と執務室が別けられている様に、私室と後宮も別けられております。寵姫の方にこちら側に来る権利はございません。お部屋にお戻りを」

 女は優雅に一礼して見せました。
 ちょーむかつくーって感じ?
 あらやだ。私も皇太子殿下の口調がうつってしまいました。

「ですが……」
「お戻りを」

 ぎらりと光る眼差し。
 自分の喉がごくりと鳴りました。

「あ、あなたのお名前は?」

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