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皇太子殿下はご機嫌ななめ
第13話 「アレクシア・フォン・ブランケンハイム登場」
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「だから俺に面倒を見ろと?」
「はい。平民ならばともかく。貴族達には不名誉な事ですからな。しかしながら皇太子殿下の後宮入りならば、口さがない者も、表立っては何も言えませぬ」

 ほほう。殿下が考え込んでおりますな。
 ここが殿下の良いところであり、弱点でもあります。敵に対しては苛烈になられても、冷酷にはなりきれぬ部分がおありになる。
 口調の割りに育ちが良いのです。
 だからこそ、陛下から後宮を造ると打診された時点で、問題のある者を入れるように差し向けたのですぞ。殿下の子を産む者なら、他にもおりますからな。
 アンネローゼとか、アンネローゼとか、アンネローゼとか。……いや、もう一人おりましたな。
 わしには分かりますぞ。
 あの女は、ベーネミュンデ侯爵夫人と同類でございます。
 そしてもう片方は、あのラインハルトの姉。
 なにをしでかすか分かったものではありませんぞ。くっくっく。
 一つ間違えると、刃傷沙汰を引き起こしそうなところがありますな。
 思い出すと背筋が震えます。そうそう、アンネローゼの部屋を用意しておいてやらねば。
 アンネローゼがあの女性と会った時を思うと、わしも皇帝陛下と同じように楽しみになってきましたぞ。
 ま、もっともいかに女達が争うとも、皇太子殿下には手を、危害を加える事はないでしょうな。

 ■宰相府 アンネローゼ・フォン・ミューゼル■

 皇太子殿下の後宮設置が発表されました。
 ぐぬぬ。なんということでしょう。
 このような暴挙が許されて良いものでしょうか……?
 ましてや、それを主導しているのがリヒテンラーデ候ともなれば、わたしの怒りは、今にも爆発してしまいそうです。

「アンネローゼ。そのように恨みがましい目をするでないわ」
「そうですかぁ〜」

 私もいれろぉ〜。とばかりに睨みます。

「そなたの部屋は、真っ先に用意してあるわ」
「おお、やっぱりそうですよね。うんうん。当然ですよね」

 毎朝、殿下を起こしてさしあげて、一緒に執務室へ向かいましょう。
 いつでも一緒。
 ふふふふふふふふふふふふ。

「怖いのう」

 なにやらリヒテンラーデ候がぶつぶつ言っていますが、そんなの無視です。無視。
 めくるめく幸せな日々が私を待っている。

 ■イゼルローン要塞 アルノルト・フォン・オフレッサー■

 窓の外には宇宙空間が映っている。
 星々の煌き。
 その中を戦乙女と巨人が駆け抜けた……。

 MS部隊がようやくイゼルローンに戻ってきた。
 よくやったと、褒めてやりたいところだが、そういう訳にもいかんのだ。
 独断専行は軍にとって厳に戒めねばならん。
 それがどれほど危険なものなのか、やつらは知らんのだろう。
 新兵なのだ。

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