第百三十七話 虎口を脱しその十一
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「神主あがりでは勝てぬか」
「我等は織田家の中でも傍流ですし」
「成り上がり者よ、朝倉家とは違ってな」
特に主である義景とはだ、斯波氏の家臣の中でのこととはいえその身分はあまりにも違うというのだ、朝倉家から見れば。
「従えぬのも道理じゃな」
「もう斯波氏には力がないといっても」
「古い考えのままなのじゃ」
室町の幕府がまだ強かった頃のだというのだ。
「朝倉家はな、しかしじゃ」
「しかしとは」
「一度宗滴殿とは戦いたい」
彼とはというのだ。
「そう思っておる」
「あの御仁はかねてより兄上のことをよく言っておられたそうですが」
「常に、それも高く買ってくれてな」
「その様ですな」
「わしを認めてくれた御仁であるし」
それにだというのだ。
「しかも天下の名将、戦のうえで破りたいわ」
「それ故にですか」
「お会いしたい、そして語りたいわ」
「語られたいのですか」
「そうも思っておる」
「戦をされるのにですか」
信行は信長が今言いたいことはわかりかねた、それで馬上で首を傾げさせてそれえ言うのだった。
「それはまた」
「わからぬか」
「どうにも」
「戦の後でも先でもな」
そうした時にだというのだ。
「そうしたい」
「顕如殿も傑物だからですな」
「そうじゃ」
だからだというのだ。
「そうしたいと思っておる」
「よいことかと。ですが」
「しかしか」
「顕如殿がどう思われているかですな」
肝心なのは相手だというのだ。
「あの御仁が」
「そうじゃな、しかしじゃ」
「兄上のお考えではですか」
「会いたい」
その顕如とだというのだ。
「そうしたいと考えておる」
「ですか」
「うむ、まあ今はそれどころではないがな」
朝倉、そして浅井をどうするかというのだ。
「目の前にあることを何とかせねば」
「なりませんか」
「うむ、そう考えておる」
こう信行に話すのだった、そうして都に入ると。
すぐに民達が都の大路で迎えてきた、左右に並び笑顔でいた。
「おお、戻って来られたぞ」
「ようやくじゃな」
「右大臣様は確かにご無事じゃ」
「よかったわ」
「しかし心配したわ」
「全くじゃ」
彼等はこう口々に言い信長を見ていた、信長はその彼等を見て少し苦笑いになって今度は池田と森に言った。
「退いて帰ってきたのじゃが」
「はい、それでもですな」
「勝って帰った時の様ですな」
「こうした出迎えを受けるのは複雑じゃ」
そうした気持ちになるというのだ。
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