第百三十七話 虎口を脱しその十
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「これだけおりますからには」
「顕如殿とてわからぬか」
「そうかと」
「ふむ、わしとしては本願寺とは揉めたくない」
これが信長の本音だ、枯れとて多くの血を流すことになる戦は避けたいのだ。dさがそれでも時と場合によってはなのだ。
「しかしいざとなればな」
「その本願寺ともですか」
「止むを得ぬな」
戦うというのだ。
「そうするしかな」
「その時にならなければよいですな」
「全くじゃ、まあ今は本願寺とは何もない」
波風一つ立っていない、実に穏やかだ。
だがその彼等とは別にだというのだ。
「今はな、都に戻り」
「そしてですな」
「すぐに岐阜に戻る」
当然信行はこれまで通り都に残るそこを治める、今の都は彼なくしてはという状況なのだ。
「それからじゃ」
「浅井、朝倉と雌雄を決しますか」
「その時に全てを終わらせたい」
浅井とも朝倉ともだというのだ。
「是非な」
「そうされますか」
「岐阜から十万程度の兵を率いて戦をする」
そうしてだというのだ。
「浅井も朝倉もどうにかする」
「それで浅井殿ですが」
「猿夜叉か」
「あの方はどうされますか」
「あの者が裏切る筈がない」
信長もこう言う、義理を絶対としている彼が裏切る筈がないというのだ。
「おそらく向こうの親父殿であろう」
「久政殿ですか」
「猿夜叉は出来る限り殺したくない」
信長の偽らざる本音だ、彼が裏切る筈がないと確信しているが故の言葉だ。
「絶対にな」
「そうですな、では」
「他の浅井の者達も同じじゃ」
彼等にしてもだというのだ。
「殺すつもりはない、猿夜叉も浅井家も天下に必要じゃ」
「では降し」
「浅井家は滅ぼさぬ」
こうした考えだった、信長は長政が裏切ったとは思えず今もこう言うのだった。
そして朝倉家についてもだ、彼はこう言った。
「そして朝倉はじゃ」
「あの家はどうされますか」
「降ればよいがそれはないであろう」
「では先の戦の時と同じく」
「攻めるしかないであろうな」
この家についてはこれしかない、信長はそう察していた。
「どうしてもな」
「ですか」
「うむ、次の戦で一気に破り浅井を動けなくしてから一気に越前まで攻め入る」
先の戦では浅井には警戒を払わなかったが今度はそうするというのだ。
「一乗谷までな」
「そうされますか」
「その時はな」
信長は前を見据えながら弟に言った。
「そして一気に降し浅井もどうにかする」
「そうされますか」
「一度退いたが諦める」
「決してですな」
「うむ、決してじゃ」
その目的は諦めないというのだ、朝倉家を仕置することは。
「さもなければ天下布武もままならぬわ」
「だからこそですな」
「最初から降ればよかったのじゃが
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