第四十話 開かずの間その三
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「丁度普通科に行くしな」
「そうですね、じゃあ御願いします」
「案内して下さい」
「わかった、では今から行こう」
日下部も二人の言葉に頷く、そしてだった。
二人は日下部に案内されて高等部の普通科に入った、するとすぐに昔ながらのセーラー服に黒い三つ編みの楚々とした少女が現れた。二人はその少女に頭を下げて挨拶を交えてから彼女にあらためて尋ねた。
「幽霊さんですよね」
「この普通科におられるんですよね」
「そうよ、十年前に八十三歳で肺癌で死んだけれど」
「八十三歳ですか」
「それじゃあこの学校におられたのは」
「そう、戦争前よ」
その頃だというのだ。
「あの頃はまだ女学校だったわね、中等部でね」
「その頃の制服ですか、そのセーラー服」
「懐かしい服ですけれど」
「そうなの、この頃が人生で一番好きだったから」
その女学校に通っていた頃がだというのだ。
「死んでからこの学校に入ったのよ」
「成程、そうなんですか」
「それでこの学園におられるんですか」
「そうよ、学校を卒業して暫くしてからお店をやってる人と結婚して気付いたら孫、曾孫に囲まれてて」
「それで八十三で、ですか」
「お亡くなりになられたんですか」
二人は幽霊の話を聞いて納得した。
「それでそのお店って一体」
「どんなお店ですか?」
「実家が元々呉服屋でね。淡路の」
幽霊は二人に自分の実家の話もした。
「今もお店はあるけれどね」
「ああ、呉服屋だからですか」
聖花は幽霊のその話からすぐにあることを察して幽霊に言った。
「女学校に通えるだけのお金があったんですね」
「あっ、昔は小学校卒業が普通だったわね」
愛実もここで気付いた、戦前は小学校までが義務教育であり中学校より上に通える者は経済的な理由からあまりいなかったのだ。
それでだ、この幽霊の実家もなのだ。
「それでなのね」
「そう、この人の実家お金持ちなのよ」
「察しがいいわね、二人共」
幽霊の方も二人の話を聞いてにこりとして言う。
「そうよ、私結構お金持ちの娘でね」
「そういえば何処か上品ですね」
「何か服も着慣れてるって感じで」
「洋服も好きだから」
その昔ながらの楚々とした感じのセーラー服を少しひらりとさせて話した。
「いつもお手入れもしてたし」
「アイロンをかけていたのだ」
ここで日下部が二人に話す。
「制服にな」
「制服にアイロンって」
「また真面目ですね」
「海軍、海上自衛隊では普通だった」
そのアイロンがけもだとだ、日下部は二人にこのことも話した。
「私も毎日かけていた」
「えっ、自衛隊もですか」
「アイロンかけるんですか」
「制服だけでなく作業服にもかける」
そちらにもだというのだ。
「特に学校の頃はな」
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