第121話 何進暗殺
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で歩いている者がいた。彼女の名は何進。彼女は元は「屠殺」を生業とする下賤の身だったが、彼女の妹が先帝の劉宏の目に止まり寵愛を受けたことで大将軍にまで出世した。
その彼女が供の者をつけず一人歩いていた。正確には内裏との境までは供を連れ来ていたというのが正しい。内裏は皇帝と皇帝の家族の生活空間のため、許可無き者はおいそれと出入りできない。
「このような時間に妹は何の用なのだ」
何進は機嫌悪そうに周囲から除く空を見やる。早朝ということもあり空は未だ完全に日が出ていない。
何進が内裏の奥へ進んで行くと急に歩くのを止めた。彼女の目の先には屈強な十人の郎官が完全武装して道を塞いでいた、その背後に張譲が底意地の悪い笑みを浮かべ立っていた。
「大将軍、よくぞ参られた」
張譲は郎官達の後ろから笑みを浮かべ何進に言った。
「張譲、私はお前に用はない。私は妹に呼ばれて来たのだ道を空けてもらおうか」
何進は冷静な返答をしているが、その表情は緊張していた。彼女は張譲の様子から自分が罠に嵌められたことを察したようだ。彼女は張譲に厳しい視線を送る中、時折周囲に目を向けた。
「大将軍に用が無くとも、私には用があるのです」
張譲は嫌らしい笑みを浮かべ話を続ける。その様は猫が鼠を嬲る様のようだ。張譲の表情は何進の命を握ったと確信した表情をしている。
何進はいきなり踵を返し駆け出した。
「大将軍、何処に行かれるのです。用は済んでいませんぞ」
張譲は何進が逃げる後ろ姿を暫し眺め郎官に視線を向けた。
「お前達! 遠慮はいらん。先帝の密勅に従い、協皇子に仇なす何進を誅殺せよ!」
張譲が甲高い声で郎官を叱咤すると、郎官十人が鞘から剣を抜き放ち何進を殺すために走りだした。張譲は何進の逃げた方向に向う郎官達の後ろ姿を見ながら満足そうな笑みを浮かべた。
「屠殺屋の娘が分を弁えぬから、このような目に遭うのだ。その点、お前の妹は貴様と違い物わかりがいい。勘違いしおって。我らは持ちつ持たれつなのだ」
張譲は伝えるべき本人の居ない場所で独白した後、踵を返し宮廷の中に姿を消して行った。
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