暁 〜小説投稿サイト〜
もしもこんなチート能力を手に入れたら・・・多分後悔するんじゃね?
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主人に体をまさぐられるのはくすぐったいが、毛づくろいやブラッシングは手慣れているし触って欲しくない場所を心得ているので不快には感じない。
実はぽんずは「前の苗」・・・つまり前の世界で成人した苗の事を覚えている。何故か?それはぽんず自身にも分からない。四宝剣とジュエルシードの相乗効果によってかこの世界に生まれたぽんずは確実に世界の情報を引き継いでいた。
それはきっと苗の当時の精神が考えていた「誰にも再会できない」という事実を変えたいという願いをジュエルシードが無意識に引き寄せ、そして「猫は喋れないから知っていても知らなくても同じこと」と方向性の網を潜り抜けさせてしまったのだろう。
勿論ぽんずはそんなことは知らない。が、幼くなった主を一目見た時ぽんずはその姿を一度も見たことが無いのに「自分の飼い主の苗だ」という結論に至った。理屈ではなく勘だったが、それは正しかった。
世界と言う枠を超えたぽんずは、既に平均的なネコでは考えられない知能を持ち、最近は苗の言っている言葉の意味を少しずつ理解出来るようになるまでに至っている。
「おいで、ぽんず」
「なーお」
苗がぽんずの身体を抱き、その毛並からくるモフモフとした感触を存分に堪能する。そのゆるみきった顔は前の世界もこっちの世界も変わらない。何となく苗が喜んでいることも表情で読み取れた。
苗は、寂しがり屋だ。ぽんずを飼い始めたのも自分が寂しかったから。ぽんずにはその気持ちが分かるような気がした。施設で生を受けて同年代の猫たちと戯れても、出荷されるときはケージの中で独りぼっち。母親も兄妹も友達もいない隔絶された世界をぽんずは知っている。その冷たさも。
ふいに苗がぽんずをなでる手を止める。不審に思って苗の顔を見ると、彼女は不安そうな顔をこちらに向けていた。
「いつかぽんずともお別れする日が来るのかな・・・」
「・・・ぅなお」
「急に居なくなったりしないよね?」
「・・・まーお」
「離れたくないなぁ・・・」
苗の顔は暗く沈んでいる。しかし、ぽんずは思う。世界を越えても主従になったのだから、きっと苗とぽんずの縁は容易には切れない、と。だから安心させてあげるためにぽんずは苗に顔を近づけ、頬を舐めた。
「ひゃっ!くすぐったいじゃんか〜・・・・・・うん、なんかありがとね?」
「まーお」
苗はぽんずがそこまで考えて行動を行っているとは知らない。それでもこうして感謝の言葉が出てくるのは、きっと繋がりがあるからだろう。眼に見えない特別な繋がりが。それを再確認できたぽんずは満足して一鳴きした。
・・・後に苗が「使い魔」と言う技術を発見するのは、それから遠くない未来の話。
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